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トランプ政権の幕開け ~新大統領が指名した閣僚の面々~

本記事が出版される頃には、2017年1月20日にワシントンDCで予定されている大統領就任式も終了し、“Make America Great Again”というスローガンの下に雇用の促進、違法移民の強制送還、減税、規制緩和などを訴え白人労働者層の支持を得て当選したと言われているドナルド・J・トランプ氏が、第45代アメリカ合衆国大統領に就任していることだろう。新政権を構成する副大統領と15省庁の長官の閣僚達は、政治経験が全く無い億万長者の実業家やオバマ政権に批判的だった退役軍人などで編成されることになり、現在、米議会上院の承認を待つのみである。その中でも、特に米国ビジネスや市民の生活に重大な影響をもたらしうるポストに焦点を当てたい。

<国務長官 レックス・ティラーソン氏>

外交を担当する国務長官に指名されたのは、レックス・ティラーソン氏。同氏は、国際的石油事業会社であるエクソン・モービル社の最高責任者であり、長年各国の要人と商談を交わしてきたという経験を持つ。特にロシアのプーチン大統領とは長年親密な関係にあり、今後の米ロ関係の動向が注目される。

<国防長官 ジェームス・マティス氏>

国家国防長官には海兵隊の元大将、ジェームス・マティス氏が選ばれた。同氏は、オバマ政権下で米国中央軍司令官を務めた。オバマ政権のイランに対する弱腰な姿勢を批判し、米軍による中東地域への積極的介入を主張する。中東地域の緊張がより一層高まるものと予想される。

<国土安全保障長官 ジョン・ケリー氏>

NY同時多発テロ後に新設され、テロ組織の脅威から安全を守るために国境整備や入国管理等を担当する国土安全保障省の長官には、海兵隊の元大将、ジョン・ケリー氏が指名された。米国南部国境から密輸される薬物ルートをテロ組織が悪用する可能性を理由に、厳重な国境警備と徹底的な薬物密輸対策を主張する。違法移民追放やメキシコ国境の壁構築というトランプ氏の公約が果たされるかどうか注目される。

<司法長官 ジョセフ・セッションズ氏>

法律担当の司法長官に選ばれたのは、アラバマ州の共和党上院議員、ジェフ・セッションズ氏。同氏は、同州の司法長官時代の僅か2年間に40人以上もの死刑判決を言い渡したが、その間、黒人差別や精神障害者に対する不当な判断を行ったとの疑惑がもたれている。移民規制に積極的であり、今後の移民規制強化が予想される。

<財務長官 スティーブン・マニューチン氏>

大統領の経済顧問たる財務長官に選ばれたのはスティーブン・マニューチン氏。同氏は、米国金融界の最大手ゴールドマン・サックスの元パートナー、ヘッジファンド投資家、ハリウッド映画プロデューサー等の顔を持ち、政治経験は無い。トランプ氏のメイン・ファンドレイザーとして選挙を支えてきた功績が抜擢の要因とみられるが、これまでウォール街とのクリアな関係を謳ってきたトランプ氏の発言との矛盾を指摘する批判もある。

<労働省長官とアンドリュー・パズダー氏>

労働省長官に指名されたのは、3,700店舗にも上る大手ファースト・フードチェーン、カールズ・ジュニアの最高責任者であるアンドリュー・パズダー氏。同氏は、オバマ政権下の連邦法・最低賃金引上げ、残業代の支払い義務強化の新規則、病欠による有給休暇制等の労働者保護政策に反対しているため、これらの規制は緩和され、事業主を優遇する方向へ進むものと予測される。

<厚生長官 トム・プライス氏>
薬品許認可、食品流通規制、公的医療保険制度の運用等を担う厚生長官には、元整形外科医のトム・プライス氏が選ばれた。同氏は、現在、ジョージア州の共和党下院議員であり、オバマケア廃止を主張する第一人者であるため、今後オバマケア廃止に拍車がかかると予想される。

(以上、2016年11月~2017年1月ワシントン・ポスト及びニューヨーク・タイムズ紙を参照)。

<まとめ>

トランプ新政権は、これまでのオバマ政権下の政策に強く反対してきた「超保守派」の人物が中心であるため、今後、トランプ氏を支持した地方労働者よりも事業主や富裕層を優遇する政策を進める可能性が高い。これに対し民主党がどのように対応するかが注目される。

本記事の内容は、一般的事実を述べているだけであり、特定の状況に対する法的アドバイスではなく、それを意図したものでもない。個々の状況に対しての法的アドバイスは、直接当事務所にご連絡頂くか、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。

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