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~ネットエンタメ時代の渦中~

映像・音楽・ゲームから書籍に至るまで、多くのエンターテイメントコンテンツがコンピュータか携帯電話、或いはその他の端末を通して楽しめる時代となった。配信も受信も簡単かつ安価なネットワークエンターテイメントだが、手軽さ故に法規制に抵触しがちであり、また法整備が技術の進歩に追いつかない状態の為に、度々法廷を賑わせている。幾つか例を見てゆこう。

<インターネットを通したビデオストリーミングとプライバシー保護>

動画配信サービスとしてはYou Tubeに次ぐ規模を誇るHulu社は、サービスを利用した個人のコンピュータに識別機能をつけて長期間ウェブ上での活動を追跡する事を第三者に許可し、その結果得た個人情報をFacebook等の第三者と共有していたとして、VPPA (Video Privacy Protection Act/ビデオプライバシー保護法)違反で集団訴訟を北カリフォルニア地区連邦地方裁判所に提訴された。1988年に発効されたVIPPAでは、書面による合意なしでの商慣習の範囲を超えたユーザ情報開示を禁じているのだが、同時にその規制の対象となる「ビデオサービス業者」を、「既に録音されたビデオカセットテープ或いは同様のオーディオビジュアル素材のレンタル、販売、配布に従事するもの」と定義している。Hulu社は「ストリーミングメディアはVIPPAの規制を受けるビデオサービス提供業に該当しない」、また「情報共有はHulu社の商慣習」と反論したものの、2012年8月10日、地方裁判所はHulu社の起訴却下要請を否決し、法的責任が法廷で争われることとなった。これからの判決が興味深い。

<インターネットを通したビデオストリーミングと著作権法違反行為>

一方では、同じくビデオストリーミングに関する著作権裁判が、控訴審を控えている。Ivi,Inc.は、自社会員に対し、インターネットを通したビデオストリーミングによるライブネットワークテレビ放送を無許可放映したとして、2010年9月28日、ABC, NBC, CBS, Fox等の大手テレビ局数社から著作権法違反で訴えられた。第一審ではivi社が敗訴したが、この控訴審ではivi社が1976年米国著作権法の適用を除外される「Passive Carrier(受動的媒体)」の一種であるケーブルシステムに該当するか否かが焦点となっている。同法の111(f)項には、「ワイヤー、ケーブル、電磁波、またはその他コミュニケーションルート(other communication channel)によって放送信号を二次的に配信する設備がケーブルシステムである」という定義があり、この定義内に「インターネットを通したビデオストリーミング」があてはまると法廷が判決を下した場合には、ivi社の活動は合法であり、著作権法に反していないことになるからだ。インターネットテレビが今後サテライトやケーブルテレビ会社と競合できる存在になるかどうか、今が正念場かもしれない。

<Peer to Peerファイルの共有と著作権違反行為>

別の例を見てみよう。ライセンス商品の無許可ダウンロードがご法度なのは周知の事実だが、ダウンロード自体を正式なルートで行っていても、ダウンロードした音楽をPeer to Peerファイル共有システムを利用して無許可配布したとして、ある米国人大学院生が2007年、Sony BGM Entertainment社を含むレコード会社数社から起訴された例がある。2009年、第一審の陪審員は、被告に対し、違反行為があった30曲に関して各曲あたり$22,500の損害賠償を言い渡した。しかし2010年には判事が「いたずらに高額な損害賠償金は法手続きを損ない、憲法違反である」として合計賠償額を$67,500に減じた。その後、原告、被告ともに上訴。その結果、2012年8月23日に控訴審にて被告が敗訴し、現時点で合計$675,000にのぼる賠償金額を抱えている。ちなみに、ファイル共有による二次的使用を論点として法廷まで行った判例はこれが僅か2例中の1つであり、残りのケースは全て示談で解決している。

<目が離せない動向>

以上3つの判例を駆け足で見てきたが、判例を繰り返して定着あるいは衰退していくのが、新しいものの常なのかもしれない。インターネットエンターテイメントに関する裁判には、まだまだ目が離せない。

本記事の内容は、一般的事実を述べているだけであり、特定の状況に対する法的アドバイスではなく、それを意図したものでもない。個々の状況に対しての法的アドバイスは、直接当事務所にご連絡頂くか、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。

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