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~モバイルアプリに警鐘? 続編~

先月当コラムで、カリフォルニア州司法長官(California Attorney General)であるKamala D. Harris氏による、モバイルアプリに対するプライバシーポリシー制度整備のお話をしたばかりである。この件に関し、2013年早々新たな動きがあった。同氏が1月10日に、プライバシー要綱「Privacy on the go: Recommendations for the mobile ecosystem」を発表したのだ。

<内容>

全22ページに上る同要綱は、目次やHarris氏の挨拶、要約を除けば以下のように区分されている。アプリデベロッパへの提言事項、アプリプラットフォームプロバイダへの提言事項、広告ネットワークへの提言事項、その他の関係者への提言事項。また、巻末には2004年7月1日に施行されたカリフォルニア州オンラインプライバシー法(「California Online Privacy Protection Act of 2003」)を挿入する等、かなりの重装備だ。内容的にはアプリによる個人データ収集の最少化を提言し、明確、正確かつ見つけやすいプライバシーポリシーを開発して個人データ収集に関するユーザの注意を喚起し、選択を可能にして、ユーザの「びっくり」を最少化することを奨励する等、今まで同氏が提言してきた事項を文書化したものということができよう。

<早速の抗議>

この「Privacy on the go」の発表に対しては、早速インターネットマーケティンググループと広告通商協会が共同で「重大な懸念」を表明する抗議文書をHarris氏に送付している。同文書中で述べられている主要な懸念事項とは以下の通りである。

  • 同要綱は、Harris氏によると「広範囲」の関係者との協議に基づいているとのことだが、その中に同協会やメンバー企業は含まれておらず、それぞれの業界の視点が反映されていない。結果として、多岐に渡る関連業界は、このような要綱が草稿されていたことすら寝耳に水であった。
  • 現在連邦レベル(商務省)でモバイルアプリの個人データ収集に関する原則を準備中であり、カリフォルニア州が独自の要綱を発表することで混乱を引き起こす。
  • 同要綱は、カリフォルニア州法に基づく現在の法的要件より遥かに厳しい内容となっている。
  • 同要綱の実行は市場の冷却化を招き、失業率を高め、カリフォルニア州の経済を損ない、消費者からモバイルに関連するアプリ、製品、サービスの利便性を奪う。

<今後の展開>

一方、同要綱を発表した際にHarris氏が口にした「We can sue and we will sue.」の一言からは、同氏の強い信念が伺える。(前回お話した通りデルタ航空は、Harris氏が警告を発した後30日を経過した時点で実際に起訴されている。)今や、モバイルアプリに「全く関係ない」と言い切れる業種はごく僅かであろう。2014年までには、モバイルからのインターネット接続数がデスクトップコンピュータからのそれを上回ると見込まれており、今後の状況は予断を許さない。

本件にからんで、Ryan Carlo氏(ワシントン大法学部助教授)が、ロサンゼルスタイムズ紙に興味深い名言を残している。「What California does often ends up becoming the law of the land.(カリフォルニアがすることは、往々にして国の法となる。)」賛否両論あるものの、今回の要綱が米国中の関心を集めていること自体には疑いの余地がない。

本記事の内容は、一般的事実を述べているだけであり、特定の状況に対する法的アドバイスではなく、それを意図したものでもない。個々の状況に対しての法的アドバイスは、直接当事務所にご連絡頂くか、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。

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