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~米国雇用法のポイント~その1~

米国進出を考慮する企業にとって、会社法、商法と並行し、米国の雇用法についての理解を十分深めることは必須である。米国では、適用される連邦法や州法、市や郡の条例のうち、従業員にとって最も有利な規定が適用されることになるため、各レベルの法規の理解が必要である。今回は、ハワイで起きた障害者差別に関する訴訟例を挙げてみる。また、カリフォルニア州の雇用主のためにCA州法にも触れてみよう。

<日系企業K社の例>

2013年1月30日、EEOC(連邦雇用機会均等委員会)は、米国で大規模に展開する日系企業K社がハワイ営業所の元従業員に対し障害者差別を行ったとし提訴したが、同社が、$77,500の賠償金を支払うことで和解したと発表した。一連の流れはこうである。1)K社の上司Aは、身体的障害を有する従業員Bに対して継続的に差別的発言やハラスメントを行なった。2)従業員Bの手術の回復後、上司Aは、人事部が介入するまで職場復帰を認めなかった。3)従業員Bは目撃者の従業員Cと共に副社長Dに対して差別とハラスメントを直訴したが、何の対策も取られなかった。4)そればかりか、従業員BとCはそれまでの高かった業務評価を下げられた。5)後日、従業員Bは管理部に苦情を提出したとの理由で報復行為を受け、退職を余儀なくされた。6)後日、上司Aは、従業員Cに対し管理部に苦情提出をした事を謝罪する手紙を書かされ、それに従わないと「解雇する」と脅かされた。7)結局、従業員Cも退職を余儀なくされた。

<差別・ハラスメントの禁止>

職場に於ける差別やハラスメントは、Title VII (1964年公民権法第7章)を始めとする数々の連邦法で禁止されている。差別禁止の対象となるカテゴリーは多岐に渡り、身体的・精神的障害や医療上の状態も含まれている。EEOCに提出される苦情申立中26.5%(2012年度統計)が障害に基づく差別に関するものである。(CA州では、婚姻状態、性的指向、エイズ/HIV患者なども保護の対象として含まれている。)

職場に於いては、例え軽い気持ちであっても法で保護されたカテゴリーを侮辱するような発言をしてはならない。法的判断基準は、発言者に「悪気があったか否か」ではなく、相手が「どう受け止めたか」が問題になる。また、この場合の「職場」は、オフィススペース以外の会社主催の社交の場、出張先でも適用されることに注意されたい。

<障害者を保護する法規の遵守>

雇用主は、ADA (Americans with Disabilities Act、米国障害者法)と適用州法を遵守し、障害のある(もしくは、雇用主がそれを知るに足る理由がある)従業員と双方向の対話を持ち、従業員が必須の職務内容を遂行できるように妥当な範囲の処遇改善措置を探り、実施しなければならない。妥当な処遇改善措置には、治療や回復期間に対する休暇や復職後の支援(補助器具の提供等)も含まれる。双方向の対話を持たず、従業員からの処遇改善要請を無視することは違法となる。

<「臭い物にフタ」は逆効果>

従業員から差別やハラスメントに関して苦情が提出された場合、雇用主は、迅速、公正、かつ徹底した調査を行ない、事実が確認された場合は適切な処分を行う必要がある。更に、再発を防止するために十分な是正措置や職場の監視を継続する義務がある。提出された苦情の調査を行なわないと違法行為となり、訴訟の原因ともなりうるのだ。マネジャーを含む管理職は、特に、差別やハラスメントのない職場作りのためにの模範的態度を示すことが望まれる。

<報復行為の禁止>

苦情の提出及び調査に参加した従業員に対する嫌がらせや否定的な雇用上の措置等の報復行為も連邦法と州法で禁止されている。EEOCに提出される苦情申立のうち38.1%(うち、Title VII のみに対する違反申立が31.4%、2012年度統計)が報復的行為に関するものである。

<連邦法の遵守>

EEOCは、「雇用主は、差別やハラスメントの報告に対して調査を行ない、効果的に対処しなければならない。勇気を出して報告する従業員を無視したり、報復行為を行なう事は連邦法違反である。」とコメントした。

本記事の内容は、一般的事実を述べているだけであり、特定の状況に対する法的アドバイスではなく、それを意図したものでもない。個々の状況に対しての法的アドバイスは、直接当事務所にご連絡頂くか、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。

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