News & Events

~2014年、米国労働法を取り巻く環境はどう変わるか?~

このコラムでは、EEOC(連邦雇用機会均等委員会)、NLRB(全米労働関係委員会)、DOL(連邦労働省)、OSHA(連邦職業安全衛生管理局)等の政府機関が、法の遵守に関して雇用主の調査や摘発に力を入れている事をお話してきた。今回は年初めということで、2014年の米国労働法について専門家の見通しをご紹介しよう。

<Systemic Watch listへの流れ>

約1年前EEOCは、その計画を「targeted enforcement」の中で明らかにし、以下の6つの項目を優先的に行なって「Systemic discrimination(組織的差別)」を撲滅する方針を明らかにした。ちなみにここで言う「Systemic discrimination」とは、業界あるいは企業全体の方針や傾向として存在する差別行為の事である。

•  募集と採用に於ける組織的な障壁をなくす。

•  移民、出稼ぎ労働者、その他弱い立場の労働者を保護する。

•  米障害者法や公民権法第7編(タイトルセブン)で保護されたLGBT、妊娠の取扱を含めた、新たな課題に取り組む。

•  同一賃金法の徹底

•  法制度へのアクセス維持

•  法的強制と特定したターゲットに対する啓蒙活動を通してハラスメントを予防する。

更にEEOCは、これまで全国規模で展開している雇用主の個々の違反案件を別々に扱ってきていたが、近年、同じ雇用主による類似の違反をまとめて調査するよう調査官に指示を出してきた。2014年は更に体系的に精力的な調査を行なうことが、期待されている。この原因の一つとして、IT技術の発達が挙げられる。EEOCは、2013年に同一の雇用主に対する類似の告発・訴訟案件を全国規模で体系的に検索するソフトウェア「Systemic Watch list」の使用を開始した。この「Systemic Watch list」により、これまで個別に扱ってきた事件をつなげ体系的なアプローチが可能となった。

同じく2013年には、OSHAも複数の所在地で事業を行う企業の違反パターンを探るソフトウェアを導入した。更にOSHAは、悪質な企業の個々の営業所での違反調査を発展させ、企業全体の運営パターンを取り締まるSevere Violators Enforcement Program (SVEP) というプログラムを開始した。

<近年の取り締まり結果>

EEOCのデータによると、9月30日締めの会計年度2013年には、EEOCは131件の訴訟を申請した。うち51件が全米労働者法がらみで、かなり力を入れていると見られるエリアだ。またEEOCは同じく2013年度、訴訟に至らなかったケースを含めると実に300件ものSystemic Investigation(システム的調査)を行い、40ミリオンドルを回収したが、調査した35%のケースに「相当な因果関係あった」が、「回収した金額は実際の調査の5%以下に過ぎない」と報告している。

これまでも刻々と変化を遂げてきた米国の労働法環境だが、前述のような流れが追い風となり、近年更に変化の速度が増していることは否めない。企業の規模に関わらず、連邦、州、郡、市のそれぞれのレベルで労働法をしっかり抑えておく事を、雇用主の皆様に改めてお勧めしたい。

本記事の内容は、一般的事実を述べているだけであり、特定の状況に対する法的アドバイスではなく、それを意図したものでもない。個々の状況に対しての法的アドバイスは、直接当事務所にご連絡頂くか、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。

J weekly・ https://jweeklyusa.com/

Go Back