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コンポーネント・パーツ・ドクトリン ~部品・素材供給会社の訴訟防御のための法理~

タバコ、自動車、建材、食品、医薬品、化学製品、機械製品など、米国の製造物責任を問う訴訟は、あらゆる業界で提起され後を絶たない。中国の建材メーカーが、同社の有毒ガスを発散する石膏ボードを使用した顧客へ損害賠償の支払いを命じられ、米国のトヨタ社が、同社の自動車のアクセル不備で事故に至った消費者との和解金額が$11億ドルにも達したのは記憶に新しい。では、これらのメーカーへ部品や素材を供給するサプライヤーが被る法的リスクについては、どのように判断すれば良いのだろうか?

消費者が、欠陥製品により何らかの被害を受けた場合、メーカーに対して①製品に対する厳格責任、②過失、又は③保証違反などに基づいた、不法行為の訴えを管轄の州裁判所で提起することができるが、大概、メーカーのみならず、小売業者及び部品・素材サプライヤーを含む流通チェーンの全関係業者が被告として名を連ねることが多い。これらの訴えは、集団訴訟や広域訴訟に発展することも稀ではなく、被告が支払う賠償額が膨大になる可能性がある。もし訴訟において完成品が実際に消費者に対して被害をもたらしたと判断された場合、部品・素材サプライヤーは、果たして完成品の欠陥に対して法的責任を負うのだどうか?

<カリフォルニア州判例法>

この問題に関しカリフォルニアの裁判所は、歴史的にコンポーネント・パーツ・ドクトリンという法理を採用してきた。これによると、部品・素材サプライヤーは、①素材・部品そのものに欠陥があり、その欠陥が被害を起こした場合、又は②素材・部品サプライヤーが、その部品を完成品に統合する上でデザインに大きく関与しており、その部品の完成品への統合が欠陥の原因であり、その欠陥が被害を起こした場合は、責任を負うというものである。通常は、完成品に至るまでの統合やデザイン、パッケージにつける表示警告等を管理する権限がないサプライヤーに対し完成品の製造物責任を負わせるのは酷だという考えに基づき、カリフォルニア州だけでなく全米中の裁判所も概ねこの法理を採用してきた。例えば、アスベスト(石綿)は素材そのものが危険な物質であるため、いくら素材を提供した会社が完成品のデザインに関与していないと主張してもサプライヤーはその法的責任を免れられない。また、デザインに関与する度合いについては、カリフォルニアの裁判所は、「その素材が完成品の製造過程で実質的に変化した場合であって、サプライヤーは完成品の開発又はデザインに限定された役割しか与えられていなかった場合」は素材・部品サプライヤーは責任を負わないと判事している(アルティグリオ対ゼネラルエレクトロニクス社(1998年))。従って、素材・部品サプライヤーが、単に納品する製品に関する情報提供を行い、完成品メーカーの仕様に従った素材や部品を納品するだけの場合は責任を負うことはないが、完成品が一定の性能基準に合致するよう素材や部品を統合する上でのデザイン上の助言を行った場合は、責任を負う可能性が高くなるので注意したい。

更に、産業分野によっては、材料サプライヤーを消費者の訴訟から保護する連邦法が存在する。例えば、The Biomaterials Access Assurance Act of 1998(1998年生体素材アクセス保証法)では、特定のインプラント型医療機器の材料サプライヤーは、①サプライヤーが部品設計に関与している場合、②サプライヤー自身が製造業者である場合、③サプライヤーがそのインプラント機器を販売する場合、④サプライヤーが生産した部品が契約要請事項又は仕様に合致してない場合、又は⑤サプライヤーが追加責任を負う又は製造業者を補償する契約を締結している場合を除き、消費者に対して責任を負わない旨を規定している。

<契約責任>

このように、完成品に関してサプライヤーが不法行為に基づく責任を負う場合は限定されているものの、もし当事者間において契約上の義務を別途設けている場合は注意が必要である。つまり、完成品のメーカーが、素材・部品サプライヤーにその責任を転嫁するような条項を含んだ契約書を署名するよう圧力をかけることがあり、力関係上、サプライヤーは、メーカーの要求に応じて契約を締結してしまう場合が往々にしてある。その場合、もし、メーカーが製品の欠陥を理由に訴えられた場合、例えコンポーネント・パーツ・ドクトリンによりサプライヤーに責任がなくても、メーカーとサプライヤー間の契約書の条項に補償義務が含まれていれば、訴訟費用及び損害賠償金を支払わされることがあるので気を付けたい。

<考察>

素材・部品サプライヤーは、製造メーカーに対して必要な部品や材料の情報を提供することは重要であるが、法律で保護されている範囲を明確に認識し必要以上にデザイン企画に参加することはリスクを広げる結果になることを認識したい。更に、自社が締結する契約書の各条項を十分に吟味し万が一の場合に補償義務を負うリスク査定を行うとともに、該当産業分野に適用される法律に基づいて自社の負う責任範囲を見極めたい。

本記事の内容は、一般的事実を述べているだけであり、特定の状況に対する法的アドバイスではなく、それを意図したものでもない。個々の状況に対しての法的アドバイスは、直接当事務所にご連絡頂くか、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。

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