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米国における契約の重要性 ~(5)契約書の基本的構成~

契約書に明記されていない事態が発生した場合や当事者が契約違反を行なった場合、紛争をいかにスムーズに早期に解決するかは、当事者達にとって気になるところである。米国では、80、90年代に訴訟にかかる膨大なコストや時間、手続の煩雑さなどが懸念され、訴訟に代わる紛争解決手段の必要性がクローズアップされた。これは「Alternative Dispute Resolution」、または略して「ADR」と呼ばれ、訴訟手続と比較してコストや時間を節約できるだけでなく、プロセス上で当事者達の自由度もある程度認められている。通常以下のようなADR手段が利用できる。

  • Mediation(調停)
  • Arbitration(仲裁)
  • Neutral Evaluation(中立的評価)
  • Settlement Conference(和解会議)

<Mediation(調停)>

Mediationでは、Mediatorと呼ばれる中立の立場にある第三者が、調停役を務め紛争解決の支援をする。Mediatorは、決定権は持たず、当事者達が解決のためのコミュニケーションを効果的に行なえるよう交通整理を行なう。Mediationは、当事者同士が解決を望んでいる場合には有効であるが、いずれかの当事者が紛争解決の意思が全くない場合や一切妥協を見せないような状況の場合は有効ではない。

<Arbitration(仲裁)>

Arbitrationでは、Arbitratorと呼ばれる中立の立場の第三者が、当事者双方の主張を聞き、双方から提出された証拠や主張を吟味した上で最終的な判断を下す。Arbitrationには、法的に拘束力のあるBinding ArbitrationとそうではないNonbinding Arbitrationとがあり、両当事者がいずれの仲裁手続を行なうかに合意した上で手続が開始される。Binding Arbitrationでは、両当事者が訴訟請求権を放棄し、Arbitratorの最終的な判断に従わなければならない。その反面、Nonbinding Arbitrationの場合、Arbitratorの最終判断に納得できない当事者は、訴訟手続を選択できる。Arbitrationは、訴訟手続に比べコストや時間がかからないと言われて来たが、最近は情報開示手続きなどの負担も大きく、必ずしもそうではない場合もある。しかし、複雑な訴訟手続きに比べ比較的簡易な手続きであり、陪審員制度がなく、情報を非公開とすることができるのが利点である。

<Neutral Evaluation(中立的評価)>

Neutral Evaluationでは、「Evaluator」と呼ばれる中立の第三者が当事者双方の言い分や証拠を確認した上でそれぞれの主張や証拠の弱点や強い点などを指摘し、解決方法を提示する。通常、紛争の的となっている分野の専門家がEvaluatorを務める場合が多い。従って紛争問題が専門的、技術的な場合には有効である。

<Settlement Conference(和解会議)>

Settlement Conferenceは、訴訟に入り、審理前に行われる最初の手続きである。強制的な場合と自主的な場合があり、裁判官あるいは「Settlement Officer」と呼ばれる中立な立場の第三者が、立ち会って和解手続を進める。裁判官やSettlement Officerは、最終的な判断を行なわず、当事者同士で和解できるよう支援する。米国では、訴訟のうち約95%のケースが和解会議で解決され、実際に審理に行くのは5%以下と言われている。

これらのADRのいずれかの手続によって、あるいはいくつかのコンビネーションを利用する事によって当事者同士の合意が得られれば、コストのかかる訴訟手続を避けることができる。

<考察>

ADRは、連邦や州の訴訟制度の権威を脅かすためのものではなく、これを支援する制度であり、訴訟手続が妥当でない場合に利用される。また訴訟手続と平行して利用される場合もあり、訴訟の選択肢を残しておきながら早期解決の可能性を探る場合もある。

ここで扱う内容は、一般的事実であり、特定の状況に対する法的アドバイスではなくそれを意図したものでもない。

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