News & Events

企業・雇用主のための COVID-19 対応に関する法的留意点(3) ~労働力の変更に伴う基礎知識~

企業・雇用主のための COVID-19 対応に関する法的留意点に関しての記事の3回目として、今回は、様々な経費削減の一環として、労働力の変更を余儀なく検討している企業が知っておくべき基礎的な選択肢を説明する。企業にとって、試練の時を乗りこえる一つの手段として、この情報を役立てていただければ幸いである。

概要

屋内退避命令が徐々に緩和されている州もあるが、企業の多くはCOVID-19の感染拡大で受けた打撃をどう乗り越え、いかにビジネスを前進させるかの課題に直面している。事業運営上の厳しい制限や、経費を削減するための最終手段として、労働力の変更を検討している企業は少なくない。以下にどのような選択肢があるか、カリフォルニア州を例として列挙する。

ノン・エグゼンプト従業員の労働時間削減

雇用主は通常、ノン・エグゼンプト従業員の予定労働時間を削減できる。しかし、エグゼンプト従業員は、労働した週に対して一週間全体分の給与が支払われるため、少しでも労働した週の労働時間を削減しても、経費削減にはならない。

従業員給与の減給

雇用主は、次の方法でノン・エグゼンプト従業員の給与の減給ができる。(a)勤務時間を削減する、又は(b) 従業員の時給を下げる。実務上は、後者よりも前者の方が従業員は受け入れ易いと思料する。

また、雇用主は、次の方法でエグゼンプト従業員の給与を減給できる。(a) 一週間以上の単位で、一時解雇を行う、又は (b) 従業員の給与を減額する。

従業員の一時解雇

一時解雇とは、事業状況又は経済事情を理由とした従業員の臨時的な解雇である。雇用主は、状況が改善した暁には一時解雇を解消して、従業員に復職を求めるという見込みの元に、一時解雇した従業員を給与支払台帳に残しておく。雇用主は、全従業員又は一部の従業員を、一定期間又は無期限に一時解雇することができる。

州ワーク・シェアリング・プログラム(従業員完全解雇に代わる方法)

ワーク・シェアリング・プログラム(California Work Sharing Program: WSP)とは、一人当たりの労働時間を減らして、ノンエグゼンプト従業員の間で業務を分かち合うことによって、完全解雇を防ぐ方法である。カリフォルニア州では、このWSPの活用が4月以降から急増している。WSPを申請するには、数々の適用要件を満たすことが必要だが、それらを満たすことができれば、雇用主は従業員の労働時間と給与を削減し、従業員はWSPを通して失業保険が支給されることになる。WSPの活用により、雇用主は育成してきた従業員を維持しつつ現状の雇用経費を削減できる上に、新規採用とそれに伴う人材の育成や解雇手続きの作業にかかる負担を減らすことができるため、雇用主にとっては有益なシステムである。

従業員の完全解雇

従業員の完全解雇が必要とされる場合には、その理由がレイオフであれ、労働力削減であれ、雇用主は、弁護士に相談して、解雇に伴うリスクの分析、完全解雇についてのビジネス上の決定理由と判断基準の文書化などを行い、従業員解雇計画の準備・実施を進めることが重要である。

この記事が米国で事業展開をしている日系企業と日本本社にとって、現地管理職が抱えている法的な課題をより理解し、運営上・雇用上のリスクを抑えるための意思決定において戦略的判断材料となれば幸いである。労働力の変更や他の経費削減方法を分析及び実施するにあたっての特定のアドバイスは、専門家に相談することをお勧めする 。

ここで扱う内容は、一般的事実であり、特定の状況に対する法的アドバイスではなくそれを意図したものでもない。

企業概況ニュース・U.S. JAPAN PUBLICATION N.Y. INC.・https://ujpdb.com/
J weekly・ https://jweeklyusa.com/

Go Back