雇用主の合理的な配慮義務と相互対話の過程 ~事業再開に向けて~
企業概況 発行日:
Jweekly 発行日:
2021年4月6日、カリフォルニア州のニューサム知事は、ワクチンの可用性及び入院率に引き続き十分な進捗が見られれば、6月15日に経済を完全に再開できる、と発表した。また、カリフォルニア州公衆衛生局は5月21日、カリフォルニア州はBlue Print for a Safer Economy(経済再開計画)を終了し、大規模イベントを除き全てのビジネスが、2021年6月15日に通常の営業を再開できると発表した。これに伴い、多くの雇用主は職場での業務を再開することになると思われるが、障がいを理由に職場復帰を拒否したり、業務を遂行することができないという従業員に対する雇用主が取るべき合理的な配慮について説明しよう。
概要
連邦法である米国障がい者法(The Americans with Disabilities Act、以下「ADA」)は、15人以上の従業員を有する雇用主は、雇用主が障がいについて認識しており、配慮をすることが雇用主に過度な負担を課すものではない場合、身体的または精神的な障がいを持つ従業員に合理的な配慮を行う義務があるとしている。また、CA州法であるカリフォルニア州公正雇用機会と住居法(The California Fair Employment and Housing Act、以下「FEHA」)は、5人以上の従業員を有する雇用主は、障がいを認識し、配慮が合理的な範囲内であり、配慮が従業員の本質的な職務遂行を可能にする場合、身体的または精神的な障がいを持つ従業員に対し、合理的な配慮を行う義務があるとしている。連邦法や他州の州法と比較して、CA州法は、より広範囲な保護を従業員に与えている。もし、雇用主がFEHA(それ以外の関係するCA州法)に準拠していれば、一般的に雇用者は、連邦法と他州の州法に準拠していると言える。
雇用主の取るべきアクション
- 合理的な配慮 雇用主は従業員に障がいの存在を認識した場合は、合理的な配慮を提供する必要があるが、障がいの内容について従業員に質問してはならず、またその特定の病状を認識する必要はない。但し、障がいや配慮の必要性が明白でない場合、従業員との相互対話を通して雇用主は従業員に障がいがあること、および配慮の必要性について医師からの見解を含む書類を要求することができる。合理的な配慮には、リモートワークの継続、職場での個室の用意、既存の施設をバリアフリー対応にすること、業務スケジュールを調整すること、別の空いているポジションへ異動させること、備品の購入や変更等が含まれる。
- 相互対話のプロセス 障がいがある従業員に対して、当該従業員が必須義務(Essential functions of the job)を遂行するためにどのような配慮が必要かを雇用主と従業員が双方で確認し、特定するためのプロセスである。従業員の制限について必要に応じて従業員の医師から意見をもらうこともあり、また合理的な配慮の必要性が一時的、恒久的、都度発生するものかを判断する。雇用主はプロセスを書面化し、従業員の人事ファイルとは別のファイルに機密書類として保管する。
原則として、雇用主は、あらゆる合理的な配慮を検討する必要があるが、合理的な配慮が著しく困難で雇用主に多大な費用が発生する場合は、雇用主にとって過度な負担となるため、配慮を提供する義務はない。
考察
雇用主は、管理職が会社の方針を実行に移せるように、管理職用の従業員ハンドブックの中でも手続き上のガイドラインを設定し、均等な雇用機会と合理的な配慮についての会社の方針を明記するなどの対応も必要となるであろう。合理的な配慮の必要性及び内容については、個別の事象ごとに状況が異なるため、具体的な進め方については、早い段階で人事部門又は弁護士にご相談されることをお勧めする。
ここで扱う内容は、一般的事実であり、特定の状況に対する法的アドバイスではなくそれを意図したものでもない。
Yorozu Law Groupは、サンフランシスコに拠点を置く国際法律事務所で、企業法務、国際税務、M&A/戦略的提携、ライセンシング、国際商取引、雇用法において日本語と英語で法務サービスを提供している。© Yorozu Law Group
略歴
萬(よろず)タシャ
Yorozu Law Group 代表弁護士
オレゴン州生まれの関西育ち。カリフォルニア州・オレゴン州弁護士、MBA取得。米国で20年以上の弁護士経験を有し、日系企業の外部顧問を多数務める。現在、北加日本商工会議所会頭、米日カウンシル常任理事兼書記役、ジェトロ SF 中小企業海外展開現地支援プラットフォームの法務コーディネーターを務めている。日英に堪能。
企業概況ニュース・U.S. JAPAN PUBLICATION N.Y. INC.・https://ujpdb.com/
J weekly・ https://jweeklyusa.com/
#YorozuLawGroup #国際法律事務所 #CCPA #Proposition24 #CPRA #カリフォルニア州プライバシー権法