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新たなデジタル資産NFT ~概要と法的側面での留意点~

日本初のNFT展覧会であるCrypTOKYOが2021年6月26日から3週間にわたって開催されるなど、日本でもNFTへの関心が高まっているが、米国でも大規模なアート作品のライセンスや販売が盛んになされている。Twitter創業者のジャック・ドーシー氏の世界初のツイートが、NFTを利用して290万ドル(約3億1,900万円)で売却されたり、その他、Tesla創業者のイーロン・マスク氏の音楽作品に数億円の値がついたりと、注目を浴びている。今回は話題のNFTについて見ていこう。

NFTの概要*

NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)とは、ブロックチェーン技術を活用し、コピーが容易なデジタルデータに対し、唯一無二な資産的価値を付与し、新たな売買市場を生み出す技術で、デジタル上での資産の鑑定書や所有証明書としての役割を持っている。これまではオリジナル作品といえば絵画やその他の有形の資産など、物理的なものに限られていたが、NFTによって無形の財産にも所有権を付与し、デジタル上のアート作品などに希少価値を持たせることが可能になった。アート、スポーツ、ゲーム、音楽などでの活用が期待されている。

NFTの主な特徴

  1. 標準化と相互運用性

NFTトークンデータは共通規格(ERC721が一般的であるが、ERC1155、Non-Ethereum NFT Standardsなどもある)によって定められている。これにより、トークンをアプリやゲームに統合する場合、他のトークンを統合するために追加の作業を行う必要はなくなり、アプリケーション間でデジタル資産を比較的簡単に転送できる。

2. 取引可能性

NFTは、オーナーシップが特定のサービスベンダーではなく非中央集権的なブロックチェーン上に明記されている。このため、所有者は暗号資産と同様に、自身のNFTを、国や既存の枠組みにとらわれることなく、従来以上に自由に取引(売却・ライセンス)することが可能である。

3. 不変性

NFTは、トークン化されたデジタル資産の価値を生み出すだけでなく、不変性を保証する。NFTは、芸術作品などの物理的なモノをトークン化できるメディアを作成する。これにより、芸術作品が重複する可能性がなくなり、アーティストのみに所有権が帰属する。これが最終的に芸術の希少性を生み出し、それゆえ芸術の価値を生み出すことになる。

4. プログラマビリティと新しい収入源

さまざまな付加機能をデータ自体にプログラムできる。例えば、画家が自身の絵画を画廊に販売し、画廊がその絵画を顧客に販売した場合、画廊から顧客に販売する際は画家には収入が入らない。しかし、NFTの場合は、「画家の手を離れても、流通時には画家に一部の収益が還元される」など、再販に対して新しい収益に繋がる仕組みを構築できる。

NFTの法的側面と留意点

NFTは、米国のアーティスト、消費者や投資家の注目を集めているが、規制や法的枠組みが追いついていないのが実態である。例えば、アーティストがNFTを販売(ライセンス)した場合、作品の著作権はアーティストに帰属したままで、購入者は作品の使用、表示といった限られた権利しか持っていない場合があるにも関わらず、購入者がそれを認識していなければ、著作権ライセンスの問題になりかねない。また、サイバーセキュリティとビジネス継続性の懸念は常に存在する。NFTにリンクされているデジタルコンテンツがハッキングされたり、コンテンツを提供しているホストが廃業するリスクもある。これらのリスクは、ライセンス契約で著作権を明確にしたり、オペレーション上やビジネスモデル上のリスクを軽減するための検討を行うことで、最小限に抑えることができる。更に、NFTの販売方法によっては、米国証券法上の有価証券と見做される可能性さえあるので、注意が必要となる。今後もNFTを取り巻く動向に注視が必要だろう。事業活動においては、早い段階から専門家に相談しながら進めることをお勧めする。

* https://www.nomura.co.jp/el_borde/view/0053/

ここで扱う内容は、一般的事実であり、特定の状況に対する法的アドバイスではなくそれを意図したものでもない。

Yorozu Law Groupは、サンフランシスコに拠点を置く国際法律事務所で、企業法務、国際税務、M&A/戦略的提携、ライセンシング、国際商取引、雇用法において日本語と英語で法務サービスを提供している。© Yorozu Law Group

略歴

萬(よろず)タシャ

Yorozu Law Group 代表弁護士

オレゴン州生まれの関西育ち。カリフォルニア州・オレゴン州弁護士、MBA取得。米国で20年以上の弁護士経験を有し、日系企業の外部顧問を多数務める。現在、北加日本商工会議所会頭、米日カウンシル常任理事兼書記役、ジェトロ SF 中小企業海外展開現地支援プラットフォームの法務コーディネーターを務めている。日英に堪能。

企業概況ニュース・U.S. JAPAN PUBLICATION N.Y. INC.・https://ujpdb.com/

J weekly・ https://jweeklyusa.com/

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