News & Events

米国著作権法におけるフェアユース規定 ~判断指針となる4つの要素~

2021年4月5日、米国連邦最高裁判所は、米国オラクル社の所有する著作権を侵害したとして、米国グーグル社に対し総額約90億ドルの損害賠償を求めて起こした訴訟について、グーグル社がスマートフォン向けOS「アンドロイド」を開発するにあたり、オラクル社の保有するJavaのコード11,500行(全体の0.4%)をコピーしたことは「フェアユース」に該当し、著作権法侵害にはあたらないとして、オラクル社の訴えを退けた。今回の判決は、多方面でさまざまな議論を巻き起こしている。今回は米国著作権法におけるフェアユース規定について説明しよう。

フェアユースの概要

音楽、映画、書籍、記事、絵画、広告、ゲーム、ソフトウェアといった全ての著作物は、著作権により保護される。その権利は通常、作成者(もしくは所有者)に帰属し、著作物を利用する場合、Copyright表示があるものについては、原則として著作権者から利用許諾を得ることが必要となる。しかしながら、米国著作権法第107条においては、著作権で保護された著作物を批評、コメント、ニュース報道、教育、学問、研究といった特定の目的で利用する場合は、著作物を許可なく利用することを「フェアユース」として認め、表現の自由を促進するとしている。フェアユースに該当するかどうかは、以下の4つの要素を考慮して判断される。

  1. 利用の目的と性質(利用が商業利用であるか非営利教育目的であるかを含む):著作権のある著作物の利用が非営利教育目的で、商業利用でない場合はフェアユースとみなされる可能性が高い。また、原著作物に新しい目的や異なる性質を追加する「変形的(transformative)」用途である場合は、フェアユースとなる可能性は高いが、本来の利用目的と何ら変わりがない場合はフェアユースとなる可能性は低い。
  2. 著作権のある著作物の性質:当該著作物が、創造的な表現を奨励するという著作権の目的にどの程度関連しているかという観点で判断される。より創造的または想像力に富んだもの(小説、映画、歌など)を使用することは、事実に基づくもの(技術記事やニュース項目など)を使用するよりもフェアユースとして認められる可能性は低い。また、未発表の著作物の利用もフェアユースとなる可能性は低い。
  3. 著作権のある著作物全体に対して使用された部分の量と実質的な価値:著作権のある著作物が素材としてどの程度使用されているか、量と本質の両方で判断される。著作権のある著作物の利用割合が大きい場合、フェアユースとなる可能性は低い。但し、一部の利用であっても、その利用が著作権のある著作物の重要な部分である場合は、フェアユースには該当しないとされる場合もある。
  4. 著作権のある著作物の利用による潜在的市場または価値に対する影響:許可なく利用することが既存または将来の市場において、著作権者の原著作物にどのような影響を及ぼすか、またその程度が検討される。著作物の利用が、原著作物の販売に置き換わるなど、原著作物の市場価値を損ねているかどうか、また利用が広まった場合に考えられる実質的な損害について検討される。

事業活動における対応

著作権者の許可を得ずに利用したとして著作権侵害の訴えがなされた場合、金銭的な損害賠償請求と使用の差し止め請求がなされる可能性がある。フェアユース規定は、著作権侵害の主張に対する積極的抗弁事由の一つであり、フェアユースに該当するからといって、そのまま著作権者の許可なく使用してよいというものではない点に留意が必要である。フェアユースに該当するかどうかは、個別での判断となるため、不要な問題を生じさせないためにも、可能な限り著作権者に許可を得ることが望ましい。事業活動においては、早い段階から専門家に相談しながら進めることをお勧めする。

参照 https://www.copyright.gov/fair-use/more-info.html

ここで扱う内容は、一般的事実であり、特定の状況に対する法的アドバイスではなくそれを意図したものでもない。

Yorozu Law Groupは、サンフランシスコに拠点を置く国際法律事務所で、企業法務、国際税務、M&A/戦略的提携、ライセンシング、国際商取引、雇用法において日本語と英語で法務サービスを提供している。© Yorozu Law Group

略歴

萬(よろず)タシャ

Yorozu Law Group 代表弁護士

オレゴン州生まれの関西育ち。カリフォルニア州・オレゴン州弁護士、MBA取得。米国で20年以上の弁護士経験を有し、日系企業の外部顧問を多数務める。現在、北加日本商工会議所会頭、米日カウンシル常任理事兼書記役、ジェトロ SF 中小企業海外展開現地支援プラットフォームの法務コーディネーターを務めている。日英に堪能。

企業概況ニュース・U.S. JAPAN PUBLICATION N.Y. INC.・https://ujpdb.com/

J weekly・ https://jweeklyusa.com/

#YorozuLawGroup #国際法律事務所 #CCPA #Proposition24 #CPRA #カリフォルニア州プライバシー権法

Go Back