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~SOPAとPIPA~

前回の記事で少し触れたが、オンライン上の偽造品販売や許可無しの映画や音楽のダウンロードを阻止するために、現在米国議会では、SOPAとPIPAと呼ばれる法案が審議されようとしている。今回は、判例ではなく法改正について探ってみる。

SOPA(Stop Online Piracy Act):米下院議員Lamar Smith氏(共和党)他によって作成された下院の法案で、オンライン上の知的財産権の侵害行為や偽造品販売を阻止するために、法執行官に更なる権力を与えるものである。具体的には、法廷命令を得ることにより法執行官は、これらのサイトを閉鎖したり、違反サイトを支援するISP(Internet Service Provider)やPayPalなどのオンライン支払いサービス会社の活動を禁止することができる。これが可決されると司法省は法廷令状を取得することにより特定のサイトをブロックしたり、ISPに対し特定のリンクを絶つことを強制できることになる。

PIPA(Protect Intellectual Property Act):米上院議員Patrick Leahy氏(民主党)他による上院の同様な法案。

<背景>

これまで何年も映画や音楽、TV番組などの海賊版はオンライン上で利用可能であったが、昨今のBroadbandネットワークの技術進歩やコンピュータ・スピードの改善により、オンラインにおける海賊版はこれまで以上の人気を呈している。これらの海賊サイトの多くは海外を拠点としたサイトであるため、米司法省の手が届かず野放し状態となっていた。

そのため莫大な利益を阻害されるとしたハリウッドのアメリカ映画協会(Motion Pictures Association of America)やアメリカ商工会議所(United States Chamber of Commerce)、カントリー・ミュージック協会(Country Music Association)などがロビイストの協力を得てようやく2011年に米上院、下院の法案作成までこぎつけ、共和党と民主党の多くの議員の支持を得ていた。

<反対運動>

しかし、GoogleやYouTube、Twitterなどは、自らがオンライン上の法執行官として監視を強制されるだけでなく、第三者の違反行為に対して不当な責任を負わされることになるとし、これらの法案に対する反対意思を表明した。(これは、銃器製造会社が自らの製品を使用した犯罪の責任を認めない論理と似ていると言われている。)

両法案に対する反対運動に足並みを揃えたこれらインターネット・サービス・プロバイダは、昨年12月に上下院議員へ嘆願書を提出し、これらの法案が中国政府やイラン政府のセンサーシップ(検閲)と同じであるとし、開かれたインターネットへの動きに逆らうものだと非難した。更に、技術分野の専門家によると、法案を作成した議員達が技術的な知識に欠け、法案の内容が明確でない点も指摘された。

<米政府>

一方、オバマ政権は、1月14日、ホワイト・ハウスの公式ウェブサイトで、「海外のサイトによるオンライン海賊行為は由々しき問題であるが、表現の自由、サイバー上の安全を脅かし、ダイナミックなグローバル・インターネットを脅かす法案には賛成できない。」と発表した。

<1月18日プロテスト>

これらのISPは、伝統的なメディアを使用した反対運動や路上のデモンストレーションという形式ではなく、自らが得意とするフォーラムであるインターネット上で反対活動を展開したのである。1月18日にGoogle、Wikipedia、Redditなどのサイトをご利用になった方々は、ご存知の通り、Googleの名称は、黒く塗りつぶされ、Wikipedia の英語版サイトは24時間自主的に閉鎖されてしまった。

<プロテストの影響>

このプロテストは、即座に効力を発揮し、下院議員のLamar Smithは法案の正式な作成を見送ると声明を発表、上院議員のHarry Raid氏(民主党)や自ら法案のスポンサーとなっていたMark Rubio氏もPIPAに対する支援を取り下げた。

<Megaupload>

1月19日、米司法省とFBIは、知財法違反の疑いで同社の管理職をニュージーランドで逮捕した。PIPAとSOPAの反対者は、両法案無しでも捜査が可能ではないかと反論している。 

<考察>

これまで政治力にアクセスを確立していた伝統的なメディアが、新規に台頭してきたインターネットビジネスに足元を救われる状態になった。特に過去十数年の間に私達の生活が大きくインターネットに依存していることを思い知らされる結末となった。今後の法案の行方が興味深いところだ。

本記事の内容は、一般的事実を述べているだけであり、特定の状況に対する法的アドバイスではなく、それを意図したものでもない。個々の状況に対しての法的アドバイスは、直接当事務所にご連絡頂くか、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。

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