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~SNSとマーケティングにおけるプライバシー~

Face Book(フェースブック)やTwitter (ツイッター)をはじめとする、いわゆるソーシャル・メディアは、ここ数年ですっかり我々の生活に定着した。遠く離れた友人や家族とも密な連絡が取れる便利なツールとして、海外在住の皆様の中にも愛用者は多いのではないだろうか。また雇用主として、社内外に向けて自社のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)アカウントを有していたり、SNSを既にマーケティングに利用している場合もあるであろう。

SNSにおけるマーケティングには、ユーザーの個人情報(年齢、性別等)とリンクできる、「お友達の○○さんが××を購入しました」のように、ユーザーの交友関係を利用していわゆる「口コミ」に似た方法が採れる、商品の「グループ」や「ページ」を作成して間接的なマーケティングができる、などの特長があり、通常のバナー広告よりも高い宣伝効果が見込めるため、広告主からの人気は絶大だ。

しかし、インターネット関連事業の例に漏れず、急激な業界の成長に伴い、SNSで行われるマーケティングに関する訴訟も後を絶たない。今回は特に、プライバシーと広告に関連する判例に注目したい。

<Face Book:「いいね!」ボタンで、無料の宣伝マンに>

Face Bookは、2004年のサービス開始以降急速にユーザー数を伸ばし、2011年9月現在のユーザーは全世界で8億人と、名実共に世界最大規模のSNSである。2011年、自分のFace Bookの中で何らかの商品に関して「いいね!」ボタンを押しただけで、プロフィール写真と名前が「Sponsored Story」としてその商品の宣伝に使用され続けている、という集団訴訟が提訴され、2012年6月、Face Book に対して1, 000万ドルの賠償金と広告に関する規約記載事項変更を命じる判決が下された。これは、宣伝に写真や名前を使用する際は、本人(未成年の場合は保護者)の明確な了承を得なければならないという、California’s Right of Publicity Lawsの規定を根拠としている。(アメリカ連邦法には、日本の「個人情報の保護に関する法律」に該当するプライバシー保護の包括的な一般法は存在せず、特定の分野毎に個人情報保護に関する規定が定められている。)

<MySpace: フレンドID>

元祖SNSともいえるMySpaceは、ユーザー数では後発のFace Bookにすっかり水をあけられた状態だが、若者文化の基本ともいえる音楽コミュニティーを意識したつくりになっており、根強いファンを持つ。ここでも、個人情報の宣伝への使用が問題になっている。FTC(Federal Trade Commission、連邦取引委員会) は、MySpaceに対して登録者の名前、年齢、性別等の個人情報を含むフレンドIDが、自社のプライバシーに関する利用規約に反して広告主と共有されているという内容の提訴を行い、2012年から個人情報に関するユーザー利用規約をより明確にし、向こう20年間、FTCから定期的にプライバシー保護に関する監査を受けることとなった。

<莫大なマーケット>

殆どのSNSは基本的に無料でユーザー登録・利用ができるが、それは、冒頭に述べたようにSNSの利点を見込んだ宣伝・広告費用を後ろ盾とすることで成り立っている。例えばFace Bookの場合、会社総収入は、2011年度が38億ドル、2012年には42.7億から69億ドルにもなると予想されているが、うち90%が広告収入である。世界規模で展開しているSNSに加えて、日本で言えばmixiのように国内(特定の言語)限定のサービスも各国に存在し、マーケットの莫大さは計り知れない。

多くの利点を持ったSNSと上手に付き合うことが、今の時代を生き残っていく手段の1つであることは疑いの余地が無いが、手段がどんなに新しくても、広告・宣伝に関する適用法は、SNSはおろかインターネットが登場する以前の法令を基本にしている事を忘れてはならない。

本記事の内容は、一般的事実を述べているだけであり、特定の状況に対する法的アドバイスではなく、それを意図したものでもない。個々の状況に対しての法的アドバイスは、直接当事務所にご連絡頂くか、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。

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