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~モバイルアプリに警鐘?~

最近の統計によれば、携帯電話普及率は90%台という高さで日米ほぼ同じだが、米国の携帯市場に特徴的なのは、うちスマートフォン(以降「スマホ」)の占める割合らしい。米国では、成人の実に44%がスマホ(iPhoneとAndroidが圧倒的多数)を有しているというのだ。日本のスマホ普及率は20%前後とのことだから、約倍以上である。スマホが市場に多く出回れば、それに比例してアプリケーションの数も増える。現在のモバイルアプリ市場は200億ドル市場とも呼ばれており、公式アプリと非公式アプリ(いわゆる「勝手アプリ」)を合わせたアプリ数は、既に100万を超えているという見方もある。(ただしこの中には、一度もダウンロードされていないアプリが結構多いのも事実のようだ。)

<Privacy Policy の欠如>

2012年10月30日、カリフォルニア州司法長官(California Attorney General)であるKamala D. Harris氏が、飛ぶ鳥を落とす勢いのモバイルアプリ市場に警告を発した。同氏は、100社以上の企業に対して通知を送達し、「プライバシーポリシーの提示なしにカリフォルニア州民に対してモバイルアプリの提供或いは個人情報収集を行うことは、カリフォルニア州法違反である。」と警告したのだ。同文書によると、受取人が30日間の猶予期間以内に是正措置を取らない場合は、各ダウンロード毎に$2,500を上限とした罰金が課せられることになる。更に同氏は、この方針をカリフォルニア州に拠点を置く企業に対してだけではなく、ユーザーがカリフォルニア州にいる場合は州外法人に対しても適用する意思を明らかにしている。最近の調査によれば、ダウンロード数上位30のモバイルアプリのうち、実に75%にあたる22アプリが、基本的なプライバシーポリシーすら提示していないのが現状である。

<適用法>

このHarris氏の警告は、2004年7月1日に施行されたカリフォルニア州オンラインプライバシー法(「California Online Privacy Protection Act of 2003」)の規定に基づいている。同法は、カリフォルニア州在住の個人から個人情報を入手する全てのウェブサイトやオンラインサービス提供者に対して適用される。

同法は、ユーザーがアクセスし易い様にプライバシーポリシーを明確に提示・デザインすることを義務付けている。同法はまたプライバシーポリシーが、ユーザーから入手する個人情報の種類と、同情報を第三者と共有する場合はその第三者のカテゴリを、それぞれ明示すること等も義務付けている。

<デルタ航空の起訴>

今年の12月6日付けでHarris氏は、「フライ・デルタ」と呼ばれるモバイルアプリを運営するデルタ航空を起訴した。同社のウェブサイトにはプライバシーポリシーはあるものの、モバイルアプリ自体には掲載されていないためである。同起訴は、Harris司法長官が同社に対して警告を発した後、30日を経過した時点で行われたものである。

<今後の影響>

今回の文書送達を受けて専門家は、モバイル独自のオペレーティングシステム、ソフトウェア、トラッキングシステム等を踏まえたプライバシーポリシーの開発を提言している。通常のウェブのプライバシーポリシーをそのままモバイルに流用すると、第三者によるデータ収集、エンドユーザートラッキング等の記載内容が、モバイルでの現状と合わなくなる危険性が高い為だ。それに加え、モバイル画面で見やすい表示というのも欠かせないポイントだろう。

テクノロジー業界の発達の速度に遅れを取りがちだった法制度も、徐々にその枠組みを整えつつある。企業としては、万全の体勢で臨みたいところだ。

本記事の内容は、一般的事実を述べているだけであり、特定の状況に対する法的アドバイスではなく、それを意図したものでもない。個々の状況に対しての法的アドバイスは、直接当事務所にご連絡頂くか、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。

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