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~米国雇用法のポイント~その2~

前回に引き続き、米国の雇用法に関してお話ししていきたい。社員の病欠に際して、医師からの証明書を雇用主が要求するのはよくある話だが、通常の場合それら証明書には「誰某が何月何日に医療上の理由で欠勤したことを証明します。」または「誰某が何月何日に医療上の理由で担当医に面会したことを証明します。」としか書かれていない。雇用主が、社員に対し病名や病状の開示を要求することはADA (米国障害者法)に基づき違法とみなされる。最近の判例を見てみよう。

<Dillard’s 社の例>

2012年12月18日、EEOC(連邦雇用機会均等委員会)は、デパートチェーン店のDillard’s社の病欠に関する方針が社員に対する障害者差別であるとし集団提訴したが、同社が、二百万ドルの賠償金を支払うことで和解したと発表した。

EEOCの発表によると、同社は、カリフォルニア州エル・セリート店の化粧品売り場に勤務していたある社員に対して、4日間の病欠に関する詳細な医療情報を要求した。(同社は、過去にも病欠した他の従業員に対して同様な要求をしていたが、詳細な医療情報の開示を要求するのは違法であるとの医師の忠告により会社の要求に従わなかった経緯がある。)当該社員が情報提供を拒否すると、同社は、過去に詳細な医療情報の提供を拒否した他の社員数名とともに当該社員を解雇した。EEOCは、ADAに基づき社員に対し医療情報の開示を迫るのは違法であり、会社の方針に従わない従業員を解雇した事実は報復行為にあたるとした。Dillard’s 社に対しては、既に特定された被害者に対する賠償金の支払と共に、同時期に同様の理由で被害を受けた可能性のある不特定の被害者に対しても賠償を行なう集団訴訟基金を設立することと、ADAの知識が豊富なコンサルタントを採用して会社方針を変更することが義務付けられた。

連邦法(ADA) 並びにカリフォルニア州法(FEHA)では、採用前に障害や病気に関する質問や身体検査を要求することは禁止されており、採用された従業員が業務を開始した後は、職務上の必要があり業務執行上不可欠である場合を除き、社員に障害(病気)に関する詳細な質問を行なう事を禁じている。また、社員の自由意思で雇用主に開示した医療情報について、雇用主は、秘密情報として扱いに細心の注意を払う義務がある。

<Clairson 社の例>

では、Max-Leave Policy(最長欠勤規定)を施行するのはどうだろう。

これまで「平等な処遇」が謳われ続けたが故に、雇用主の中には、no-fault attendance policy (理由の如何に関わらない出勤規定)を採用し予め規定された最長欠勤可能日数に達した社員を理由の如何に関わらず解雇するという方針を採用しているところもある。しかし、このような方針下では、前回お話したReasonable Accommodation (妥当な処遇改善措置)を実施することなく解雇されるケースがあり、前出のADA及びFamily and Medical leave Act (家族及び病気療養休暇法)に基づいて違法とみなされる可能性が高い。例えばHolly v. Clairsonの例では、6ヶ月中に18回の遅刻をした(殆どの場合は僅か1分の遅刻であった)咎で解雇された下半身麻痺の社員が、ADAの基でClairson 社を提訴し、第一審では却下されたものの、控訴審に於いて訴因ありとされた。

これは、障害のある社員と障害のない社員を等しく扱ったがゆえに雇用主が「不平等である」とされた例である。前述の控訴審での裁判所のコメントを紹介したい。

「Reasonable Accommodation(妥当な処遇改善措置)」の規定の目的は、手続きの平等を謳うことではなく、障害を持つ社員が過度の労力を消耗せずに職務上必要不可欠な任務をこなす事ができるように各々の障害を有する社員に異なった処遇をするべく雇用主に要請することである。」

本記事の内容は、一般的事実を述べているだけであり、特定の状況に対する法的アドバイスではなく、それを意図したものでもない。個々の状況に対しての法的アドバイスは、直接当事務所にご連絡頂くか、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。

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