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~Googleブックスの著作権裁判~

調べ物がある時、皆さんはまず何をするだろうか。一昔前であれば「図書館に行く」というのが定番であっただろうが、現在は、「インターネットで調べる」人が、ほぼ間違いなく大多数であろう。書籍や文献を調べるに際してもそれは同様であり、書籍検索サービスが大きく貢献している。

例えばGoogleブックスの「ライブラリープロジェクト」は、書籍検索サービスのGoogleブックスに、全世界の提携図書館の蔵書を加え、著作権が有効な書籍は内容の一部を、著作権切れの書籍は全文を閲覧できる便利なサービスである。提携図書館には、スタンフォード大学、ニューヨーク市立図書館、オクスフォード大学図書館、ハーバード大学図書館等、そうそうたる有名どころが名を連ねている。2003年に計画が発表され、2004年に本格運用が開始されたGoogleブックスだが、当初から作家や出版社からの著作権訴訟に苦しんできた。

<裁判の流れ>

2005年、米国作家協会が、Google社を「同社のライブラリープロジェクトは、著作権物のデジタルコピー作成を行なっており、大規模な著作権侵害である」としてニューヨーク南部地方裁判所に起訴した。対してGoogle社は、公正使用(Fair Use)の範疇であると主張。「The Authors Guild, Inc. v. Google Inc.」裁判が幕を開ける。

2008年、Google社との和解案が成立しかかるが、この和解案は結局2011年に裁判所により否認されてしまう。

2012年には、大手出版社数社がGoogle社と和解成立。その一方で、作家協会は裁判を継続していた。

2013年11月14日、そのGoogleブックス著作権裁判に一つの区切りがついた。第二巡回控訴裁判所で、当初からこの件を担当していたChin判事により「公正使用である」というGoogle社の主張が認められ、作家協会の告訴が棄却されたのだ。

<判決文に見る公正使用(Fair Use)の根拠>

著作権法では、第106条で著作権所有者の広範囲にわたる独占権を認める一方、第107条では、同法の106条及び106条(A)で付与された著作権に関わらず、批評、コメント、奨学金、研究等を目的とした複製やコピーは、著作権物のFair Use (公正使用)であり、著作権の侵害に該当しないとしている。その後公正使用とみなされる四つの要素が続くのだが、そのうち第一要素と第四要素が最も重要とみなされており、今回の判決もこれらに基づいていたのでここにご紹介する。

第一要素:使用の目的と特性(商業目的か、非営利教育目的か):使用がtransformative(生産性を有する)かどうかにかかってくる。transformative の解釈には諸説あるが、Chin判事によれば、Googleブックスの検索機能は「高度にtransformativeであり、文書を索引化して、研究者、読者、学生を助ける存在である。」

第四要素:その使用が潜在的な市場或いは著作物の価値に与える影響:Chin判事によれば、Googleブックスは新しい読者を開拓し、作家と出版社に新しい収入源を生み出し、絶版になった書籍や古い書籍を保管して、新たな命を吹き込む。書籍販売者に、読者が書籍を注文する便利なリンクを提供する。また、このオンラインショッピングの時代に、Googleブックスが書籍販売を向上させていることは疑いの余地がない。Chin判事は、この第四の要素が「公正使用」という結論を出すのに大きなポイントを占めた」と結んでいる。

この判例は告訴から実に8年かけて棄却されたわけだが、その間のインターネット環境の発展(特にモバイル機器の急速な普及)が重要な背景となった事は間違いない。作家協会が今後控訴するか、それともGoogleブックスとの共存の道を選ぶのかが注目される。

本記事の内容は、一般的事実を述べているだけであり、特定の状況に対する法的アドバイスではなく、それを意図したものでもない。個々の状況に対しての法的アドバイスは、直接当事務所にご連絡頂くか、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。

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