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~無断欠勤ならぬ無理出勤?~

無断欠勤(Absenteeism)に悩まされる雇用主の問題はよく耳にするが、病気や体調不良でも無理に出勤する従業員の傾向をプレゼンティーイズム(Presenteeism)と呼ぶことはご存知だろうか?(ここでは仮に「Presenteeism」を「無理出勤」と訳すことにする。)体調が悪いのにもかかわらず「無理出勤」する従業員は、本来のパフォーマンスを発揮できないだけでなく、他の従業員へ病気を移す可能性もあるため、米国の雇用主に及ぼす「無理出勤」の被害は年間1500億ドルとも言われている。「無理出勤」は、会社や同僚に対する従業員の忠誠心や正義感、責任感によるものだが、実は、職場で十分な病気休暇(Sick leave)が認められていない事が緊急の課題であると多くの社会学者は指摘している。

この問題を州レベルで解決しようとカリフォルニア州議会は、新法案AB1522(The Healthy Workplaces, Healthy Families Act of 2014)を可決し、9月10日にジェリー・ブラウン州知事が署名して2015年7月1日からの施行が確定した。これでカリフォルニア州は、コネチカット州に続き有給の病気休暇を義務付ける全米二番目の州になった。以下に同法の骨子を説明しよう。

法の適用を受ける雇用主は、公的機関、一般企業にかかわらず、カリフォルニア州で年間最低30日の勤務を行なう従業員を一人でも雇用する雇用主とされている。同法によると2015年7月1日以降、年間最低30日の勤務を行なう従業員は、パートタイム、フルタイム、テンポラリーの区分にかかわらず、30時間の勤務毎に最低1時間の有給病気休暇の蓄積を採用日から開始でき、90日間の勤務以降に病気休暇の蓄積分を自らの病気や家族の看病の目的で使用できるというものだ。雇用主は、従業員の病気休暇の取得に上限を設けることが可能だが、少なくとも年間最高3日間(24時間)までの取得は認める必要がある。未消化分の病気休暇は、翌年に繰り越すことが可能であるが、雇用主は、年間最高6日間(48時間)を超える休暇の蓄積を認める必要はない。

既に同法の要件を十分満たす病気休暇制度、又は有給休暇制度を採用している雇用主は、新たに同法の遵守を行なう必要はないが、同法が適用されるか否かについては、専門家にご相談されることをお勧めする。

ちなみに団体交渉によって病気休暇が保証されている従業員、団体交渉によって州最低賃金の30%増しの賃金を保証されている従業員、航空会社の乗組員や客室乗務員、自宅介護士などは、同法の適用を受けない。

更にサンフランシスコ市で事業を行なう雇用主は、既に適用されているサンフランシスコ市の病気休暇条例との兼ね合いが難しい。今回の州法と同条例は、概要は似ているものの、詳細規定に違いがあり、基本的には、従業員にとってより有利な規定を採用する必要がある。これについても専門家にご相談されることをお勧めする。

【考察】

法改正が遅れ勝ちな連邦法と比較し従業員の権利を優遇する傾向のあるカリフォルニア州で事業を営む限り、雇用主は、連邦、州、カウンティ/市レベルのコンプライアンスに頭を悩ます結果になるが、従業員が健康を維持し健全な職場環境を育むことは、長期的な観点から事業の発展につながることに留意したい。筆者も風邪をこじらせながら執筆に取り組んでいるが、「無理出勤」のコストに気をつけたいものである。

本記事の内容は、一般的事実を述べているだけであり、特定の状況に対する法的アドバイスではなく、それを意図したものでもない。個々の状況に対しての法的アドバイスは、直接当事務所にご連絡頂くか、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。

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