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~和解をするための和解~

従業員が離職時に雇用主と締結する離職合意書/訴訟請求権放棄合意書や、雇用主と元従業員間の訴訟の和解のために締結する和解合意書など、当事者間で和解にこぎ着けるためには各条文の内容においても両当事者の歩み寄りが必要になる。通常、このような契約書には、「元従業員は元雇用主の下での再雇用を申し込まず、元雇用主も当該従業員を再採用しない」という条項を盛り込むことがよくある。これは、元従業員が引き起こすかも知れない将来の似たような法的リスクを回避するための元雇用主の対策なのだが、カリフォルニア州を含む西海岸を担当する第9巡回区連邦控訴裁判所によると、このような条項を含む契約書は、カリフォルニア州法違反の可能性があるようだ。

<判例>

Golden v. California Emergency Physicians Medical Groupの判例は、Dr. Goldenが元雇用主であるCalifornia Emergency Physicians Medical Group(以降「CEP」という)との和解合意書が問題になったケースである。同和解合意書には、Dr. Goldenが「CEPの現在のいかなる拠点、あるいは将来保有することになるいかなる拠点において、再雇用を受けるいかなる権利を放棄する」と言う一文が含まれていた。Dr. Goldenは、同和解合意書がカリフォルニア州法違反であると主張していた。カリフォルニア州では、「いかなる契約も何人が合法的な職業、商売、事業に従事することを阻止するようなものは、無効である」とする法律が存在するからである。このBusiness & Professions Code、Section 16600は、米国中でも最も厳しい反競合を阻止する法律であり、過去においても法廷は同法を理由に雇用や職業遂行を阻止するようなあらゆる契約を無効とした経緯があった。Dr. Goldenは、B&P Section 16600を理由に同和解合意書が法的に無効であるとの主張をしていたが、第一審である地方裁判所は、同法は反競合を阻止するものであり、Dr. GoldenとCEP間の和解合意書は、その性格上反競合を謳うものではないため、B&P Section 16600は適用されないとしたのである。

Dr. Goldenは第9巡回区連邦控訴裁判所に控訴した結果、同控訴裁判所は、第一審の判決を覆したのである。連邦控訴裁判所によると、第一審はB&P Section 16600を狭義に解釈し過ぎたとし、同法は、ただ単に将来の雇用や職業選択の自由を阻止する条文のみが無効であるだけではなく、このような条文を含む契約書すべてが無効であるとしたのである。連邦控訴裁判所は、本件を第一審に差し戻し、将来の雇用を阻止する条文が原告の職業を妨げる可能性があるか否かを判断するように指示した。

<考察>

今後、雇用主が元従業員との和解を行う際、和解契約書が元従業員の将来の職業選択の自由を不当に妨げていないか否かを考慮する必要がある。

本記事の内容は、一般的事実を述べているだけであり、特定の状況に対する法的アドバイスではなく、それを意図したものでもない。個々の状況に対しての法的アドバイスは、直接当事務所にご連絡頂くか、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。

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