News & Events

~英語オンリーの職場規定は違法?~

米国で仕事をしていると、いろんな国々の人々がそれぞれの母国語を話している職場環境に巡り合う機会が多い。しかし、多国籍の従業員がいる職場で意志の疎通を図るためには、やはり共通語である英語が必要不可欠である。では、職場で英語オンリーの規定を採用することは合法であろうか?

<判例>

2015年5月7日、スペイン語を母国語とする14人のヒスパニック系従業員が、雇用主であるGate Gourmetに対して会社の英語オンリーの規則は公民権法第七章で保証されている出身国の差別にあたるとして、カリフォルニア州裁判所に提訴した。これまで同社では英語オンリーの規則を採用していなかったものの、シフトマネジャーが従業員に対して一定時間の間スペイン語を話す事を禁止していたというものだ。従業員は、常にスペイン語を話しているか否かを監視され怯えながら仕事をしていたという。本訴訟の判決は下りていないものの、公民権法第七章の解釈、行政手続、執行手続きを担っている米連邦均等雇用機会委員会(EEOC)は、これまで英語オンリーの規則の被害を受けた従業員に代わり雇用主を相手どって訴訟を起こし、莫大な和解金や損害賠償金を獲得することに成功している。以下にいくつか例を挙げてみよう。

1999年9月、EEOCは、勤務期間中英語オンリーの規則を採用していたテキサス州の私立大学University of Incarnate Word を相手取り、18人のヒスパニック系清掃員を代弁して同大学を提訴していたが、2001年4月、同大学は、$2.44 millionの和解金を支払うことで和解手続に応じた。

又、1998年1月、EEOCは、同じく職場で英語オンリーの規則を採用していた、テキサス州の長距離電話オペレーションの会社、Premier Operator Services, Inc. を相手取り、13人のヒスパニック系従業員を代弁して、連邦地方裁判所で同社を提訴した。2000年9月、同社は、敗訴し、$700,000の損害賠償金の支払いを命じられた。つまり、英語オンリーの規則は訴訟リスクが高いのが実状だ。

<米連邦労働省の指導要領>

労働省は、英語以外の母国語を話す従業員は組織の利益につながるという立場をとっている。例えば、職場の安全管理を管轄する米労働安全衛生局(OSHA)の例をとり、英語以外を母国語とするOSHA局員がいることで職場の安全指導を様々な言語を話す労働者に対しての指導ができると証明している。更に、同省によると、職場で常に英語オンリーを強制することは、英語を母国語としない従業員に対し不当な負担を掛けるのみならず、公民権法第七章の違反と見なされるとしている。英語オンリーの規則は、事業目的を達成するためのみに正当化され、限定的に適用することは可能な場合もあるが、一定の条件を満たす必要があるとしている。例えば、英語しか話さない顧客、同僚、上司との会話が必要な場合、緊急非常時に全員に対して避難指示などが必要な場合、共同作業を行う上で職務効率を上げるために必要な場合、又、英語しか話さないマネージャーが職務上の監視をするために必要な場合などである。

<考察>

従って、法に抵触しないためには、雇用主は以下のことを考慮する必要がある。

• 英語オンリーの規則を採用することのビジネス上の利点と差別と見なされるリスクを評価する。

• 英語オンリーの規則に代わる手段がないか調査する。

• 英語オンリーの規則を採用する前に専門家に相談する。

世界から多様な民族が集まるシリコンバレーにおいては、英語のみならず、他言語オンリーの規則や労働環境も差別的行為と見なされる可能性があるので注意したい。

本記事の内容は、一般的事実を述べているだけであり、特定の状況に対する法的アドバイスではなく、それを意図したものでもない。個々の状況に対しての法的アドバイスは、直接当事務所にご連絡頂くか、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。

J weekly https://jweeklyusa.com/

Go Back