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他州に比べて厳しいカリフォルニア州法 ~カリフォルニアでの事業機会~

カリフォルニア州は、環境保護、雇用、プライバシー保護など多岐の分野に亘り、連邦法や他の州法と比較して高い法令基準を設定している州の一つである。そのため、自動車メーカーは、他州より厳しい排気ガス規制や燃費基準を満たし、雇用主は、従業員の権利を保護し、個人情報を保護するための規定を満たす必要がある。トランプ政権は、発足後、様々な連邦法の規制緩和を進めているものの、カリフォルニア州議会は、州の高い環境保護基準を維持するとの意向を示しており、その他の面でも規制緩和の見通しはない。では、カリフォルニア州で事業を行うメリットはあるのだろうか。また、複数の州で事業を行う場合は、どのような対策が必要だろうか。

<環境保護規定の長期的利益>

昨今、北京の大気汚染が報道されているが、太平洋戦争終結以降70年代にかけてスモッグに悩まされていたのは、ロスアンジェルス市であった。当初は、旧日本軍による化学兵器が原因との疑いもあったが、急激に増加する自動車の排気ガスが、日光により光化学スモッグを生成することが科学者達によって解明された。喘息、気管支炎、肺がんなどの症状を訴える市民は、デモにより法規制を呼びかけ、目先の利益を先行させる自動車産業との確執の挙句、カリフォルニア州は、1959年に全米で初めて排ガス規制を実施し、1975年にはカリフォルニアで販売される全軽自動車に有害排気成分を浄化するための触媒コンバーターを取付けることを義務付けた。その結果、ロスの大気は、大幅に改善されるに至った。これを受けて連邦政府や他州も追随し、1981年には連邦法により触媒コンバーターの取付が全米的に義務付けられ、2012年にはオバマ政権により全国的排ガス規制が施行されたのである。

つまり、一時的に企業への技術的、経済的負担が生じたものの、カリフォルニア州の厳しい法規制の結果、他国に劣らない高品質の自動車開発が可能になり、住民の健康回復や環境改善による観光収入の増大など、長期的かつ派生的な社会利益を生むことになった訳である。仮に自動車産業がカリフォルニア州から事業撤退していたなら、現在の米自動車産業の技術は、数十年遅れていたのかも知れない。

<雇用法>

しかし、複数の州で事業を行う場合、常に事業地の州、地方の法令を確認し遵守しなければならない煩雑さがでてくる。ノン・エグゼンプト従業員(時間給対象の従業員)の最低賃金規定について見ると、連邦法より高い賃金を独自に設定しているのは、カリフォルニア州を含む29州とワシントンD.C.であるが、連邦法より低い賃金を設定している州や最低賃金規定がない州では、連邦法の規定を遵守することになる。

また、残業手当の計算については、連邦法下によると、一週間40時間を超える労働を行う場合、雇用主は、通常の時間給の1.5倍の残業手当を支給することが義務付けられている。カリフォルニア州では、一週間40時間または一日8時間を超える労働を行う場合、残業手当の支給が定められており、1日8時間から12時間までは1.5倍、12時間を超える場合は2倍の残業手当を支給しなければならない。また、連続7日目の労働の場合、最初の8時間は1.5倍で、8時間を超える労働は、2倍の残業手当の支給が定められている。

ちなみに、独自の残業手当規定を採用している州は、カリフォルニアを含め6州存在する。連邦法と同様の規定を採用している州や残業規定のない州では、前述と同様に連邦法の規定が適用されることになる。

他州と比較して物価や住宅事情が緊迫しているカリフォルニア州では、人件費がかかることは止むを得ないが、全米で事業展開を図る場合、カリフォルニアの市場を避けて通れないのも事実である。

<考察>

カリフォルニアを含む複数の州で事業を行う場合は、すべての適用法を専門家と確認しながら慎重に長期的な事業計画を立てることが重要である。リスクの高い分野や州で事業を行う場合は、責任を限定するために別法人を立てることも一策である。

参考文献

Megerian, Chris. “California’s vow to reduce auto pollution may be setting up a full out war with Trump.” Los Angeles Times 24 Mar. 2017: Los Angeles Times Web. 10 May 2017

Gardener, Sarah “A Smog: The Battle Against Air Pollution.” Marketplace 14 Jul. 2014: Marketplace Web. 10 May 2017

本記事の内容は、一般的事実を述べているだけであり、特定の状況に対する法的アドバイスではなく、それを意図したものでもない。個々の状況に対しての法的アドバイスは、直接当事務所にご連絡頂くか、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。

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