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米国における契約の重要性~妊娠はキャリア障害?~

著名人や政治家によるセクハラのニュースが報道される中、1月20日の土曜日は、全米各都市で「Women’s March(女性大行進)」が多数の参加者で繰り広げられ、女性の権利向上を求める声が世界中に轟いた。

 

米国の女性が直面する状況の中でも、妊娠は、未だに女性のキャリアの向上を阻止するものとして見られる場合が多い。現在、米労働者の47パーセントを女性が占め、出産した女性の僅か62パーセントのみが翌年に復職している現状で、妊娠に対する雇用主の扱いは、米国の労働者に大きな影響を与えることは否めない。今回は、妊娠差別について考察してみよう。

 

1978年、米議会は、「妊娠差別禁止法(Pregnancy Discrimination Act of 1978)」を施行し、「妊娠、出産、又はこれらによって派生する医療状態を理由に差別を行うことは、1964年の公民権法第7編(Title VII of the Civil Rights Act of 1964、以下「第7編」)で規定される性差別である」とした。更に、同法は、雇用主が妊娠した女性を類似した能力や制限を持つ他の従業員と同様に扱うことを義務付けている。

 

 

<判例>

2015年3月25日、米最高裁は、妊娠を理由に差別を受けたとして元雇用主のUPSを相手取って訴訟を起こしていた同社の元配達員Peggy Young氏の弁護士と同社の弁護士の陳述や弁論を聞き議論を交わした。

 

Young氏は、UPSの配達員としてトラックを運転し手紙や小荷物を顧客に配達していたが、妊娠と同時に医者から重い物を持たないようにアドバイスを受けた。同氏は、UPSに対して身体的に負担の少ないポジションへの移動を要請したものの、同社はその要請を却下し、出産2ヶ月後に彼女が復職するまで無給の休職扱いにしたのである。

 

その結果、7ヶ月の間、健康保険や賃金、障害者手当を失ったYoung氏は、妊娠差別禁止法の違反を理由にUPSを提訴した。一審ならびに二審は、原告の主張を支持したものの、第4巡回区連邦控訴裁判所は、原告の主張を却下したため、今回の最高裁の審理となった。

 

最高裁の判事の前で、UPS側は、同社のポリシーに従って、妊娠した女性を公平に扱ってきたと主張した。つまり同社では、いずれの従業員に対しても、勤務中に怪我をした場合や米国障害者法の適用を受ける場合、免許証を失った場合には処遇改善を行い、勤務外に起こった出来事で身体的な制限が起こった場合は処遇改善の対象にはならず、妊娠は勤務外に起きた出来事であるとした。

 

Young氏側は、UPSは飲酒運転で免許証を失った従業員に対しては代理の運転手を提供するにもかかわらず、妊娠中の女性に対しては同様な手配を行わなかったことを指摘し妊娠差別法違反だと主張した。

 

最終的に最高裁は、6対3で連邦控訴裁判所の判決を覆した上、UPSが他の大多数の従業員と比較しYoung氏を違う基準で扱ったとする、同氏の主張を再度審理するよう差し戻しの判決を下した。

 

【考察】

米国では、妊娠を理由に差別することは違法ではないとした1976年の判例(General Electric Co., v. Gilbert)を受けて、妊娠差別禁止法が立法された。この法の解釈は、今後多くの女性に多大な影響を与えることになるため、今後の判決が注目される。

 

ここで扱う内容は、一般的事実であり、特定の状況に対する法的アドバイスではなくそれを意図したものでもない。

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