News & Events

M&A ~米中貿易冷戦とQualcomm~

米国と中国間の貿易摩擦の悪化が懸念される中、2018年4月16日付ニューヨークタイムズ紙によると、米商務省は、中国の大手通信機器メーカーである、ZTE CorporationとZTE Kangxun Telecommunications Ltd.(以下、併せて「ZTE」)が、米国輸出管理規制に違反しイランや北朝鮮へ米技術を供給したとして、米企業によるZTEへの部品輸出を今後7年間禁止すると発表した。当該措置は、中国第二の通信機器メーカーを米技術から2025年まで排除することになり、同社の存続が危ぶまれている。しかし、皮肉にもこの狭間に立たされているのがZTEを顧客に持つ米企業のQualcommだ。今回は、米中間の貿易冷戦がどのようにQualcommのM&Aに影響を及ぼしているかを探ってみよう。

本誌の3月号でもお伝えしたように、今年の2月、サンディエゴを拠点とするQualcommは、Broadcomによる1,210億ドルの敵対的買収を拒否したが、同時に米政府に支援を要請した。対米外国投資委員会(Committee on Foreign Investment in the U.S.)は、外国による米国内の投資が国家安全保障を脅かすか否かを調査することを任務としており、同委員会の報告を受けたトランプ政権は、同年3月5日、シンガポールを拠点とするBroadcomによるQualcommの買収は国家安全を脅かすとし、同買収を阻止した経緯がある。(その後、Broadcomは、拠点を米国に移転した。)

一方、Qualcommは、自律運転車(autonomous vehicle)分野への進出を強化するために必要不可欠の技術を持つNXP Semiconductors(オランダ法人)の買収を440憶ドルで計画しているが、世界中の同社の拠点を管轄する各国政府に当該買収の認可を要請しているものの、唯一中国政府のみがその許可を渋っている。米政府のZTEに対する輸出禁止措置のニュースが報道された後、中国政府は、QualcommのNXP Semiconductorsの買収が市場に「多大な影響」を与えると発表した。

これまで中国は、安い労働コストを米企業に提供することにより、米企業のみならず米消費者もその恩恵にあずかっていたが、2015年に中国政府は、「中国製造2025」と呼ばれる戦略的イニシアティブを打ち上げ、ハイテクインフラ、人工知能(AI)、ロボット、新エネルギー車、バイオなどの先端産業の育成強化を開始した。特にQualcommが製造するチップは、次世代のネットワークと呼ばれている、第5世代移動通信システム(5G)に不可欠なものであり、世界各国の先端企業がしのぎを削る中、ZTEやHuaweiもこの分野の優勢を狙っている。5Gが浸透するにつれ、5Gに組み込まれるチップなどの機器を外国企業から供給を受けることにより、国家の安全に影響を及ぼす結果になりかねないため、各国が自国の技術を保護する傾向が増えている。

過去数年、中国政府も同様に中国国内で市場を拡大しているQualcommやCiscoに対する懸念を感じている。事実、中国政府は、2013年同社を査察し15か月の調査の結果、同社が独占法に違反したとして、9億75百万ドルもの膨大な罰金を科し、同社の製品の価格を下げ、Qualcommの技術性の高い製造過程を中国に移行し、中国企業の技術支援を行うことを強制した。

同様な中国政府による仕打ちに苦情を呈した各米企業を代表し、米国政府は、中国による米技術の窃盗を糾弾し、中国国内で活動する米企業に対しその技術や知財を共有することを要請するのは不当であるとしている。

<考察>

今後の両国の貿易冷戦がどのように世界経済に影響するかを注目したい。

ここで扱う内容は、一般的事実であり、特定の状況に対する法的アドバイスではなくそれを意図したものでもない。

企業概況ニュース・U.S. JAPAN PUBLICATION N.Y. INC.・https://ujpdb.com/
J weekly https://jweeklyusa.com/

Go Back