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米国のeコマースから発生する売上税の徴収・納税義務の広範囲化 ~ネクサスについて~

時代と共に発展し続ける法律

前回は、米国連邦最高裁判所が去年6月に下した判決(South Dakota v. Wayfair, Inc.)によって、売り上げが発生した州(購入者がいる州)に企業(業者、販売者)の物理的拠点が実在しなくても、つまり物理的なネクサスがなくても、購入者から売上税を徴収してその州に納税することが義務付けられたことを紹介した。今回は、企業に課される売上税の徴収・納税義務に焦点を置き、この「ネクサス」の定義と解釈の進化と広範囲化について説明しよう。

Wayfair判決以前のネクサス

その州に本社がない、あるいは登記されていない企業の売り上げに対して、州が売上税の課税権を持つか否かの判断をするには、アメリカ合衆国の憲法で謳われている条項を理解する必要がある。憲法では、もし、その州におけるその企業の活動、接点、またはかかわり度合いが「それ相当のネクサス(substantial nexus)」だと見なされれば、その州に売上税の課税権があるとされる。240年以上前の建国当時の憲法における「それ相当のネクサス」という概念は今日まで変わっていないが、その定義と解釈は時代の流れと共に大きく進化し、広範囲化してきた。

インターネットがまだ普及していなかった 50年以上前の判例に遡るが、「それ相当のネクサス」があると判断されるには企業の物理的な拠点(physical presence)がなければならないと解釈されていた。物理的な拠点とは、店舗を構える、自社の倉庫を設置・運営する、従業員を雇うなど、企業がその州において州外法人としての支店登録や雇用者登録を必要とされる活動拠点を指す。

Wayfair判決後のネクサス

30年程前から始まったeコマースを始めとするシェアリング・エコノミーやギグ・エコノミーのような新しいビジネスモデルに基づくインターネットを使った取引きが急速に普及する一方で、法的な基準や解釈の整備は後追いになってしまっている。去年のWayfairの判決で連邦最高裁は50年前に下した判決を覆し、「それ相当のネクサス」とは「物理的な拠点」ではなく、「経済的、バーチャル的接点(economic and virtual contact)」であると大胆に広義解釈した。

しかし、連邦最高裁は、どのような活動や接点が州内における「経済的、バーチャル的接点」とされるかは言及していない。従って、具体的な基準はそれぞれの州議会で規定されることになる。現在、既に約40州が取引金額(例えば年間20万ドルあるいは50万ドル)や取引回数(例えば年間200回)によって売上税のネクサスの有無を判断する規定を導入し、州によっては、クリックスルー接点、アフィリエイト接点、マーケットプレイス接点などもネクサスの判断基準に含めて売上税の徴収・納税を義務化している。

考察

 経済事情を反映して税収入を増加させるためにも、今後も各州議会が、ネクサスを「経済的、バーチャル的接点」と解釈する法案、規定、基準を取り入れることは確かである。従って、米子会社や支店を設けている日本企業のみならず、アメリカに物理的拠点を置いていない日本企業であっても、ビジネスモデルによっては購入者が所在する州に売上税の徴収・納税義務が発生するかどうか確認することをお勧めする。

ここで扱う内容は、一般的事実であり、特定の状況に対する法的アドバイスではなくそれを意図したものでもない。

企業概況ニュース・U.S. JAPAN PUBLICATION N.Y. INC.・https://ujpdb.com/

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