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米国のeコマースから発生する売上税の徴収・納税義務の広範囲化 ~eコマースが州の経済に及ぼす影響~

2019年3月13日の米国商務省の発表によると、2018年第4四半期のeコマースの売り上げは、1,328億ドルとなり9年間続けてうなぎ上りに上昇している。それと比べて、2017年12月時点での米国会計検査院(U.S. Government Accountability Office)の調査では、eコマース市場全体で売上税が徴収されている商取引は、わずか14%から33%のみであった。ということは、eコマースの全ての売り上げが売上税の課税対象であれば、州によっては、売上税において67%から86%の増収の可能性があるということになる。財政面で厳しい状況に置かれている州にとっては、この収入による経済的インパクトは大きい。

eコマースによる売上税の徴収義務は、各州によって多少の違いはあるが、一般的には取引金額(例えば年間$20万ドル)や取引回数(例えば年間取引数200回)によって、売上税のネクサスの有無を決定する州が増えてきた。小規模な販売者でない限り、eコマースを行う業者はほぼ全州における納税・申告義務を負うことになる。

売上税の税制改正と米最高裁の判決

2018年6月、サウスダコタ州がeコマースの大手ウェイフェア社を訴えた裁判(South Dakota v. Wayfair, Inc.)において、売り上げが発生した州(購入者がいる州)に企業(業者、販売者)の物理的拠点が実在しなくても(物理的ネクサスが無くても)、経済的なネクサスがあれば、売上税を購入者から徴収して納税することを義務付ける、米国連邦最高裁判所による判決が下された。この判決に基づいて、その他の州もeコマースの売上税改正に向けて早急に動き始めた。全米50州のうち、売上税制度が無いアラスカ州、デラウェア州、モンタナ州、ニュー・ハンプシャー州、オレゴン州の5州を除く45州とワシントンDCのうち、現時点で30以上の州がその州に拠点を持たない販売者にもeコマースにおける売上税を徴収することを義務付けている。既に2018年中にeコマースの売上税を徴収する法律を施行した20以上の州に続き、2019年1月からはニューヨーク州やカリフォルニア州でも施行されている。

売上税制度では、小売業者が売上税を最終消費者から徴収し、州当局に対して納税、申告を行う義務を負うが、ウェイフェア社の判決が下される前は、eコマースの小売業者が、最終消費者(顧客)が所在する州に直接的または代理人を通じて物理的拠点を有していなければ、業者は売上税を徴収する義務がなかった。ただし、業者に売上税を徴収する義務がない場合には、顧客である最終消費者が「使用税」を自ら州当局に納付することが義務付けられているが、実際には殆ど使用税の納税はされていなかったのが現状である。

サービスの提供と売上税

これまでは、売上税は物品などの有形資産の販売のみを対象として、サービスの提供は課税の対象外としている州が多かった。例えば、ソフトウエアをCD-ROM等の有形媒体で販売する場合は売上税を徴収する義務があるが、同じソフトウエアをダウンロード式に販売すれば、サービス型ソフトウエア(SaaS)として、売上税の対象外としている州が多かった。しかし、ここ数年、州によっては、eコマースによるサービスの購入に対しても、売上税の課税対象とする規定を導入している州が増えている。例えば、HuluやNetflixのようなストリーミング・サービス、電子書籍、UberやLyftなどの配車サービスでも売上税を課す州がみられるようになっている。

考察

米国に進出している日本企業またはその米子会社は、事業拠点がどこにあるかに拘わらず、顧客がいて経済的ネクサスの条件を満たす全ての州に売上税を徴収して申告しなければならない可能性があるので、各州の売上税に関する最新情報は常に把握しておきたい。

ここで扱う内容は、一般的事実であり、特定の状況に対する法的アドバイスではなくそれを意図したものでもない。

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