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運転手は従業員、ギグワーカーの権利保証 ~カリフォルニア州で可決~

2019年9月18日、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事の署名により、独立請負人(インディペンデント・コントラクター)の条件を示す州法(以下、「AB5」)が法制化され、2020年1月から施行される。これによりUberやLyftなどの事業者は、条件を満たさない運転手を「従業員」として扱う必要があり、待遇悪化が指摘される運転手の権利保護を図る一方で、ライドシェア・サービスを提供する事業者が支払うコストの増加は避けられない。この州法に他州が追随する可能性もあり、全米に影響が広がることも想定される。

概要

2019年9月12日にカリフォルニア州議会は、独立請負人の条件を示す州法AB5を可決した。AB5は独立請負人の3つの条件を定めている。その条件とは、労働者が(A)業務に関する契約または業務の遂行中に、事業者の指揮命令下にないこと、(B)事業者の通常業務の範囲外の業務を行うこと、(C)従事している業務と同じ性質の独立した商売、職業、事業に従事していることである(これらの条件は、ABCテストとして知られている)。事業主は1つでもこれらの条件を証明できない場合は、従業員として扱わなければならないことになる。具体的には、事業者は最低賃金を保証したり、オーバータイムの支払いに加え、失業や病欠時の保険や労災保険に加入しなければならないので、事業主にとっては大きな負担となる。(医師や弁護士などは対象外である。)

背景と影響

この影響を大きく受けるのがUberとLyftである。両社は、シェアエコノミーへの変化の追い風に急成長を遂げ、一般の運転手と乗客とをマッチングするサービスを提供し、運転手を独立請負人として扱ってきた。運転手は自分の車で空いている時間に仕事ができるという自由な働き方が認められる一方で、実質的には従業員のように管理されているにもかかわらず、従業員であれば受けられる権利が確保されないという声も上がっていた。

しかし、運転手を従業員として扱うと、企業側に負担が生じることになる。英バークレイズはカリフォルニア州でライドシェアの運転手を従業員として扱った場合、対応費用として一年度につきUberは5億ドル、Lyftは2億9,000万ドルが必要となると試算している。

考察

このように、UberやLyftなどのライドシェアサービスの運転手が従業員扱いとなる可能性に注目が集っている。しかし、ライドシェア以外の業界においても、AB5が適用除外になる職業か、フリーランス労働者を引き続き独立請負人として取り扱うことができるかという点は、事業を進めるに当たって、改めて整理をしておく必要があり、AB5の影響は広範囲に及ぶ可能性もある。

日本では、政府が成長戦略の柱の一つとして、「働き方改革」を掲げ、副業と兼業の拡大やフリーランスとして働きやすい環境の整備を打ち出している。最低賃金、時間外勤務手当や労災保険等が適用されないフリーランスに関わる法整備について、厚生労働省は検討会を設置し、契約ルールの整備等を議論し始めたのだ。公正取引委員会も交渉力の強い企業が個人事業主に不利な条件を強要していないかの監視を強める動きもある。

新たな働き方として脚光を浴びるギグエコノミーだが、サービスを支える従事者の権利を保証することにより、健全なビジネスを推進することが時代の要請となってきたものと思われる。カリフォルニアで事業を行う事業主は、専門家のアドバイスの下、適切な従業員の区分を改めて整理し、雇用法上のリスクを下げることをお勧めする。

ここで扱う内容は、一般的事実であり、特定の状況に対する法的アドバイスではなくそれを意図したものでもない。

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