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経営者が法務機能を使いこなすための行動指針~日本企業の国際競争力強化のために~

先日、今年度から開講した、スタンフォード大学SPICE(Stanford Program on International and Cross-Cultural Education)と県立広島大学MBAとの連携科目“Stanford-Hiroshima Collaboration Program”の授業の第7回を担当し、「ベンチャーの法的枠組み」について取り上げた。受講者はMBA生なので、法律の細部の解説ではなく、ベンチャー企業立ち上げ時に法的視点でどのような計画を立てるべきか、法的リスクを最小限にするために気を付けるべき点、法律家から見たベンチャー企業を成功させるための秘訣についてお話しさせていただいた。その後、近時の米国スタートアップ企業の不祥事に伴い、企業文化の重要性が再認識されていることも題材として取り上げ、企業文化の形成・維持に関してディスカッションを行った。受講者から、活発に質問をいただき、議論をし、ビデオ会議の画面からでも、熱意が伝わってくる授業であった。

企業文化の重要性について

さて、授業で取り上げた題材の一つを紹介しよう。シリコンバレーを代表するベンチャー・キャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツの共同創業者である、ベン・ホロウィッツ氏(日本でもベストセラーになった“Hard Things about Hard Things”でも有名)が、近時出版した“What you do is what you are”とそれに関連して受けた取材で、近年のUberなどの米国スタートアップ企業の不祥事は、経営者が倫理性、合法性が競争に勝つより決定的に重要だと周知させることに失敗したことが原因だと言及し、経営者は企業文化の重要性を再認識すべきであると論じた。同書では、その企業文化の形成・維持の具体例を紹介している。

日本企業の法務機能の在り方について

一方、日本企業においては、「三方良し」と昔から言われているように、企業文化の重要性は広く認識されているものの、法務機能の強化は、ようやく課題として認識されだした段階と言えるだろう。この点、経済産業省が2019年11月19日に公表した、「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会 報告書」では、Airbnbなどの事例を挙げながら、法務機能がいかに企業価値の向上に有益であるかを論じた後に、日本企業が法務機能を使いこなせていないことを問題提起したうえで、「経営者が法務機能を使いこなすための7つの行動指針」を提示しており、特に重要な点をサマリーしておく。

〇法的リスクは、事業の立案・具体化・実行・管理といった一連の流れのいずれの段階でも発生し、かつ、リスクの除去・軽減のためには、その早期からの法務部門・外部弁護士の関与が望ましい。

〇経営者は、法務部門責任者・外部弁護士と定常的に相談する機会を設けているか。信頼関係が構築できているか。

〇経営者は、法務部門以外の部門においても、法的リテラシーをもった人材の配置や育成ができているか。

〇経営者は法務部門・外部弁護士に十分な予算を配分できているか。

なお、報告書の原文は社内の法務部門を念頭にした記載であるが、外部弁護士にもあてはまるため、外部弁護士を追記した。

考察

以上の他にも様々なチェック項目が提示されており、自社の現状を把握するために、確認することをお勧めする。自社の課題と認識された点については、その他の事業の課題の進め方と同様に、課題解決の工程表を作成し、進捗をレビューしていくことが重要である。弊所も外部弁護士として、日本企業の法務機能強化の一員となり、日本企業の国際競争力の強化、企業価値の向上に貢献することができれば、望外の喜びである。© Yorozu Law Group

ここで扱う内容は、一般的事実であり、特定の状況に対する法的アドバイスではなくそれを意図したものでもない。

企業概況ニュース・U.S. JAPAN PUBLICATION N.Y. INC.・https://ujpdb.com/

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