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カリフォルニア州Proposition 65~法改正とコンプライアンス~

1986年11月のカリフォルニア州住民投票により、圧倒的な支持率を得て立法化された安全飲料水及び有害物質施行法(Safe Drinking Water and Toxic Enforcement Act of 1986、別名:Proposition 65)の法改正が、2016年8月30日付で採択された。今年の8月30日からコンプライアンスが義務付けられているため、概要について以下に説明しよう。

<背景>

1968年発行のライフマガジンの表紙にアポロ8号から撮影された青い地球の写真が掲載され世界を賑わした。宇宙に浮かぶ地球の写真に感動した平和活動家のJohn McConnell氏が扇動し、1969年にサンフランシスコ市で開催されたユネスコ会議で初めて「Earth Day」が採択された。

以来、1970~1980年代にかけて環境問題に関する関心が高まる中、1985年カリフォルニア州リバーサイド郡で有害物質の廃棄による汚染問題が米国最大の公害訴訟に発展し、同州経済開発委員会は、有害物質によるがんの死亡者数は、毎年2,500人を超えると発表。これに触発されて、1986年11月、安全飲料水及び有害物質施行法(Proposition 65)が成立し、同州が管理する有害物質リストに掲載される化学物質の廃棄を禁止するとともに、「明確かつ合理的な警告なし」に誰をも晒してはならないと規定された。当該有害物質リストは、毎年更新され、現在、1,000種に近い化学物質が含まれており、これには従来から人体に危険とされている鉛、水銀、ヒ素、アスベストなど以外にも、動物実験などで危険性があると見なされるようになった酒類に含まれるエチルアルコール、アスピリン、またアミノ酸や糖類を過熱することで生成されるアクリルアミドなどもある。最近になり、缶詰や瓶のキャップの内装に使用されるBPA(ビスフェノールA)や大麻の煙、木材の粉塵なども追加された。

従業員を10人未満しか雇用していない事業主は、同法の適用を免れるが、製造者が適用を免れたとしても、その製品を扱う流通業者や小売業者が10人以上の雇用を行っていると適用を受けるため注意が必要である。また、カリフォルニア州に拠点を持たない事業主であっても、eコマースや通信販売などで、同州で製品が流通、販売され、違法物質を含んでいる場合は適用を受け、適切な「明確かつ合理的な警告」が必要となる。違反者は、カリフォルニア州司法長官、地方検察官、あるいは、人口75万人を超える市の司法官により提訴される可能性があり、一日最高2,500ドルの罰金を課されることになる。また、公益を代表する誰でも違反者を提訴することが可能なため、賠償金目当ての訴訟ラッシュが起っていることから、ビジネス界からの非難も上がっているのも事実である。

<法改正>

今回の法改正は、近年浸透してきたeコマースにも対応し、一般消費者により分かり易い情報を提供するために、警告の掲示方法や警告文の内容が改定されるとともに、製造業者、流通業者、販売業者の責任が明確化された。特に警告文については、警告シンボルの表示や化学物質名と各物質の危険性を明記することが義務付けられ、同法を執行する担当局のウェブサイトのリンクを掲載することも義務付けられた。各業界ごとに警告文のサンプルも提供されているが、規定が詳細に分かれているため、事前に時間をかけて準備を行うことが必要である。

<考察>

同法の適用を受ける事業主は、今年の8月30日までに同法のコンプライアンスを確認するべく、専門家のアドバイスを仰ぎながら適切な手続きを行うことをお勧めする。

ここで扱う内容は、一般的事実であり、特定の状況に対する法的アドバイスではなくそれを意図したものでもない。

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