~ポロのマークにまつわる商標戦争~
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「ポロ」と聞くと実際のスポーツ競技のポロよりも、スティックを振りかざす馬上のポロ選手を描いたPolo Ralph Lauren(以下、PRL)のロゴマーク(マーク)を思い浮かべる読者の方が多いかも知れないが、これに類似している二人のポロ選手を描いたマークの存在をご存知であろうか?
1890年に創立されたUS Polo Association(以下、USPA)は、全米ポロ競技者によって運営されている米国ポロ競技のご本家の団体である。このUSPAがライセンス販売する香水ボトルに描いた二人のポロ競技選手のマークが、PRLの商標を侵害しているか否かを争っていた事件で、2013年2月、第二巡回区連邦裁判所は、PRLの訴えを全面的に認め、USPAに対し当該マークの使用を即時に止めるよう差止命令を下した。
PRLとUSPAの確執はほぼ半世紀にも亘っている。1967年に、ファッションデザイナーのRalph Lauren氏は、「Polo」という文字を商標登録した。これがポロの文字やマークにまつわる長い商標戦争の幕開けである。Ralph Lauren氏が商標登録した当時、USPAは商品のマーケティングに無関心であったが、1981年にはUS Polo Association Inc.という会社を設立し、ライセンシング事業に乗り出した。その後、USPAのブランド名義の衣類販売などによるロイヤリティー収益は増え続け、2001年の時点で年間220万ドル(約2億2000万円)にも及んだ。現在、USPAが衣類用のブランドのマークとして用いているのは、U.S. Polo Assn.やU.S.P.A.という文字と、馬に乗ったポロ競技者二人のシルエットである。
USPAの販売が拡大するに従い、PRL側がUSPAのマークがPRLのマークに似すぎているとして商標権侵害で何度も訴えたり、また逆にUSPA側が、PRLがUSPAの販売店に対して商標侵害で訴える旨の手紙を送付しUSPAの営業を妨害していると訴えたりし、両社の争いは泥沼化している。しかし、裁判所の判断は現在まで、ほぼPRL側の訴えを支持する結果となっている。1984年や2006年の判決においては、衣類に施されたUSPA側の二人のポロ競技者シルエットのみのマークは、PRLの商標権を侵害していると判断された。もっとも、同じ競技者二人のシルエットに「U.S.P.A」ロゴが入ったマークに関しては侵害していないと判断された。
2013年2月に第二巡回区連邦裁判所が下した判断は、またもや従来の裁判所の判断の流れに沿うものとなった。USPAは香水分野に進出することを計画し、競技者二人のシルエットにU.S.P.A.と文字の入った香水のボトルをデザインし、商標出願した。衣類に関して2人のポロ競技者のシルエットに文字を加えたものは商標侵害していないと判断されていたため、その判断に従ったデザインであった。しかし、このデザインを巡り、PRLとUSPAが商標権侵害の有無を争っていた。たとえ衣類商品群で商標権侵害がないとされたとしても、それは新しい商品群(この場合は香水)における商標権侵害がないとする根拠とはならないと主張し、これまでの経緯に鑑みて、シルエットに「Polo」という文字のみを加えたマークを使用することも併せて禁止するよう裁判所に求めていた。
結果的に裁判所はPRLの主張を認め、USPAに対し、マーク使用の終局的な差止めを命じた。加えて、ポロ競技者2人のシルエットと一緒に「Polo」という文字を使用することを一律に禁じることも、両社の長年の対立に鑑みれば不適切に広範囲な禁止とは言えず、終局的差止命令は適切であるとした。
ポロを巡るPRLとUSPAの争いはいまだ終着点を見ない。両社にとって商標及びそれに付随するロイヤリティーはビジネスの生命線であり、お互いに譲らないであろう。一つ明確に言えることは、USPA側が知的財産権の重要性を早くから認識していれば、このような商標戦争になることは避けられたということである。USPAの方が本来のPoloの競技者による団体であり大義名分があるようにも思われるが、PRL がUSPAに先立って商標を登録している以上、法的には自社の商標権を守っているにすぎないと理解される。商標登録を適切に行い、知的財産権を管理する重要性をここで改めて指摘しておきたい。
本記事の内容は、一般的事実を述べているだけであり、特定の状況に対する法的アドバイスではなく、それを意図したものでもない。個々の状況に対しての法的アドバイスは、直接当事務所にご連絡頂くか、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。
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