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~カリフォルニア州もパワハラ規定?~

90年代にいじめや嫌がらせ問題が社会的に表面化し始めた日本では、今世紀に入って職権を悪用したいじめを表現する「パワーハラスメント」、あるいは「パワハラ」という造語が一般に浸透し始めた。岩手県や大分県など一部の地方政府は、パワハラの定義や指針を策定し、2012年には厚生労働省のワーキング・グループによる報告書が提出された。更に昨今のパワハラ訴訟が紙面で注目を浴びている。米国の事情はいかがであろうか?

米国では、連邦法、州法、地方条例の規程により、人種、肌の色、性別、宗教など一定のカテゴリを理由にした差別的な雇用上の判断や、過度かつ職場に蔓延するセクハラは禁止されているものの、パワハラという法的概念がない。しかし、今年の9月、カリフォルニア州のジェリー・ブラウン知事は、法案AB 2053に署名し、これまで一定の雇用主に義務付けられていたセクハラ・トレーニングのトピックにいじめや嫌がらせを阻止するための内容も加えることが法的に義務付けられ、来年1月1日から施行されることになった。

<現行規定>

現在、カリフォルニア州では、2004年に可決された法案AB 1825に従い、50人以上の従業員を抱える事業主は、2年に一回、部下を持つスーパバイザー全員に対して、最低2時間のセクハラ・トレーニングを義務付けている。新規にスーパバイザーに昇格した従業員に対しては、その昇格から6ヶ月以内に同様なトレーニングを受けさせる必要がある。

<AB 2053>

現行の規程に加え、来年1月1日から施行されるAB 2053は、現在セクハラ・トレーニングを義務付けられている全事業主に対して、新たに職場での「虐待的な行為 (abusive conduct)」を防止するための対策をトレーニングの範囲に含めるよう義務付けている。

同法上「虐待的な行為」とは、「悪意を持った行為で、一般人から見て敵意があり、侮辱的であると看做される行為を指し、雇用主の正当な事業内容に関連しないもの」を意味する。

更にAB 2053は、「虐待的な行為」の例も挙げており、それには何回も繰り返される侮辱や人格を傷つけるような発言や暴言/脅迫的、威嚇的、侮辱的な発言や身体的行為/他人の職務を理由無く妨害することなどが含まれている。

又、同法の定義によると、一回切りの言動は、「虐待的な行為」と看做されないとしながらも、度を過ぎて甚だしい言動はその限りではないとしている。

尚、同法は、雇用主が提供しなければならないトレーニングのトピックを定義するものであり、「虐待的な行為」を訴因として定義するものではないため、個人が「パワハラ」を理由に提訴することはできない。

【考察】

AB 2053の規程は、広義に記述されているため、今後、カリフォルニア州の雇用主やカリフォルニア州を含む複数の州で事業活動を行う雇用主は、差別やセクハラのみならず、職場でのいじめや嫌がらせを防止するよう、社内規定やトレーニングの内容を再考することが重要である。

場所は変わっても、いじめや嫌がらせを受けたり目撃することは、心地良いものではない。少しでもお互いを尊重し合い、心温まるホリデーシーズンを迎えたいものである。

 

本記事の内容は、一般的事実を述べているだけであり、特定の状況に対する法的アドバイスではなく、それを意図したものでもない。個々の状況に対しての法的アドバイスは、直接当事務所にご連絡頂くか、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。

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