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~妊娠はキャリア障害?~

21世紀の米国においても、妊娠は、未だに女性のキャリアの向上を阻止するものとして見られる場合が多い。現在米国労働者の47パーセントを女性が占め、出産した女性の62パーセントが翌年には復職している現状で、妊娠に対する雇用主の扱いは、米国の労働者に大きな影響を与えることは否めない。今回は、妊娠差別について考察してみよう。

会社によっては、勤務中の怪我に対しては一定の手当や保護を与えるが、勤務外に起こった怪我にはそれが適用されないというポリシーを採用している会社がある。例えば、職場で怪我をした従業員は、より負担の少ない職場に移して貰えるが、自宅で怪我をした場合は、それが認められないと言った具合だ。では、妊娠した女性はどのような扱いを受けるべきであろうか?「妊娠は、勤務中の怪我とは違い、プライベートの時間に従業員の選択で起きたもの。週末にオフロード・トラックを運転して怪我をした従業員と同じだ。」という解釈は正しいであろうか?

この考察を行う前に、ある連邦法を理解しておく必要がある。「妊娠差別禁止法(Pregnancy Discrimination Act of 1978)」では、「妊娠、出産、又はこれらによって派生する医療状態を理由に差別を行うことは、公民権法の第七章(Title VII of the Civil Rights Act of 1964)で規定される性差別である」としている。更に、同法は、雇用主が妊娠した女性を類似した能力や制限を持つ他の従業員と同様に扱うことを義務付けている。

従って、問題は、上記のような解釈がこの妊娠差別禁止法に違反し、結果、女性差別と看做されるか否かということになる。昨年末、米最高裁判所の9人の判事は、この法の解釈と適用性について議論をした。

<判例>

2014年12月3日、米最高裁は、妊娠を理由に差別を受けたとして元雇用主のUPSを相手取って訴訟を起こしていた同社の元配達員Peggy Young氏の弁護士と同社の弁護士の陳述や弁論を聞き議論を交わした。

Young氏は、UPSの配達員としてトラックを運転し手紙や小荷物を顧客に配達していたが、妊娠と同時に医者から重い物を持たないようにアドバイスを受けた。同氏は、UPSに対して身体的に負担の少ないポジションへの移動を要請したものの、同社はその要請を却下し、出産2ヶ月後に彼女が復職するまで無給の休職扱いにしたのである。

その結果、7ヶ月の間、健康保険や賃金、障害者手当を失ったYoung氏は、妊娠差別禁止法の違反を理由にUPSを提訴した。一審ならびに二審は、原告の主張を支持した結果、敗訴したUPSが、今回最高裁に上告した形となった。

最高裁の判事の前で、UPS側は、同社のポリシーに従って、妊娠した女性を公平に扱ってきたと主張した。つまり同社では、いずれの従業員に対しても、勤務中に怪我をした場合や米国障害者法の適用を受ける場合、免許証を失った場合には処遇改善を行い、勤務外に起こった出来事で身体的な制限が起こった場合は処遇改善の対象にはならず、妊娠は勤務外に起きた出来事であるとした。

Young氏側は、UPSは飲酒運転で免許証を失った従業員に対しては代理の運転手を提供するにもかかわらず、妊娠中の女性に対しては同様な手配を行わなかったことを指摘し妊娠差別法違反だと主張した。

ケーガン判事は、妊娠した女性に対する偏見をなくすために立法された妊娠差別禁止法の趣旨を指摘し、ギンズバーグ判事はUPSの主張するように同法を狭小に解釈することは、妊娠した女性の権利を狭めることになると懸念した。

最終判決は、今年の6月に予定されている。

【考察】

米国では、妊娠を理由に差別することは違法ではないとした1976年の判例(General Electric Co., v. Gilbert)を受けて、妊娠差別禁止法が立法された。この法の解釈は、今後多くの女性に多大な影響を与えることになるため、今後の判決が注目される。

 

本記事の内容は、一般的事実を述べているだけであり、特定の状況に対する法的アドバイスではなく、それを意図したものでもない。個々の状況に対しての法的アドバイスは、直接当事務所にご連絡頂くか、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。

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