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~米連邦最高裁、「同性婚は全米で合憲」~(前篇)

1972年の判決で同性婚を違法としてから43年後の2015年6月26日(金)、全米の賛否に分かれる国民が見守る中、米連邦最高裁判所の判事9人のうち5人の判事が、Obergefell v. Hodgesの裁判において、同性婚は憲法で保証された権利であると歴史的な判決を下した。その翌日から2日間に亘りサンフランシスコ市で開催されたサンフランシスコ・プライド・パレードは、歓喜に沸くLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)支持者や観光客で百万人を超える参加者を集めた。LGBTの社会運動として始まったこのパレードは、今年で45周年目を迎えると同時に今回の最高裁の判決を祝った。オバマ大統領は、「今日の判決は、アメリカにとっての勝利だ」とこの判決を支持した。これで米国は、2001年に世界初にオランダが同性婚を認めてから21番目の国となった。

<合法化に至る経緯>

未だ同性愛が精神異常と見なされていた1970年、婚姻届けを却下されたミネソタ州の二人の男性(Richard Baker氏とJames McConnell氏)が、これを米国憲法違反であるとして提訴した裁判(Baker v. Nelson)において、ミネソタ州最高裁は、同州婚姻法で婚姻が異性間のみと定義されていないにしろ、当時の草稿者である州議会が同性婚も含むべく条文を執筆したと考えるのは「非現実的」であり、米国憲法について最高裁における前例がないとして原告の主張を却下した。これを不服とした原告は、1972年米最高裁に上告したものの、最高裁は審理を行わすに同上告を却下し、事実上、原告側敗訴の判決を下したのである。その43年後、同性婚合憲の決め手となった米最高裁のケネディ判事は、その判決文で「Baker v. Nelsonは、覆されるべきであり、今まさに覆された」と発表した。

その後、エイズ感染で同性婚の法的手続きの進展が遅れたものの、1993 年、ハワイ州最高裁の判事Steven Levinson氏は、同州の同性婚禁止策を違法と主張する、三組の同性カップルが提訴した裁判(Baehr v. Lewin)において、「同性婚禁止策は、性差別である」という異例な判決を下し第一審に差し戻した。同判決は、同性婚に関するその後の法的環境を向上させる兆しに見みえたものの、その後反対勢力の盛り返しが強くなるのである。

ハワイ州最高裁の判決に脅威を感じた米議会の保守派は、婚姻を異性間のみ合法とする婚姻保護法(Defense of Marriage Act、以降「DOMA」)を通過させ、1996年、当時のクリントン大統領が同法案に署名し立法にこぎ着けた。これをきっかけに、米国各州で立法や州憲法修正により同性婚を禁止する動きが目立ち、事の発端であるハワイ州においても州議会が同性婚を禁止する法案を可決し、更に州民投票により州憲法を修正し同性婚を禁止してしまったのである。

再起は、2003年マサチューセッツ州の最高裁において起こった。Julie Goodbridge氏とHillary Goodbridge氏を始めとする原告7組をまとめた訴訟(Goodridge v. Dept. of Public Health)において、同州憲法下で同性婚を拒否できるか否かの論点について、同州最高裁の7人の判事のうち4人が「州憲法は、すべての個人の威厳と平等を保証しており、下級クラスの市民を生むことを禁止しているため、同性婚を拒否することはできない。」との判決を下したのである。婚姻とは、子孫繁栄のためであり異性間のみが出産が可能との理由で、同性婚を認めるべきではないとする州司法長官や州政府側の見解に対し、州最高裁長官のMargaret Marshall判事は、「出産力は婚姻の要件ではなく、更に、出産できないからと言って離婚の理由にもならない」と退けた。しかし、反対派の動きは根強く、同性婚に賛成した判事Roderick Ireland氏は、当時殺しの脅迫を受けたこともあったと証言している。

当時のマサチューセッツ州知事であったMitt Romney氏は、同性婚を禁止する州憲法修正案で州民の意思を問うべきだとし同州最高裁の判決を公然と非難したが、結局、州憲法の修正には至らず、2004年5月に同州では同性婚が開始された。

2004年の大統領選挙活動が開始される中、再選を狙うブッシュ大統領は、同性婚を阻止すべく米国憲法を修正することを主張、同年12月までにジョージア、ルイジアナ、モンタナ、ネブラスカ、ネバダなど、主に南部、中西部の13州の保守派が、同性婚を禁止する州憲法改正に成功し、2006年には、ニューヨーク州最高裁が同性婚禁止策を支持する判決を下した。米最高裁の明確な指針が無いまま、同性婚の兆しは危ぶまれたが、ニューヨーク州に住む同性カップルの訴訟が2013年に米最高裁で争われ、大きな転機を迎えることになる。(次号に続く)

本記事の内容は、一般的事実を述べているだけであり、特定の状況に対する法的アドバイスではなく、それを意図したものでもない。個々の状況に対しての法的アドバイスは、直接当事務所にご連絡頂くか、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。

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