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医療機器OEM 及びサプライヤーの製造物責任等の法的防御について

米国商務省の発表によると、2015年のグローバル医療機器市場の43%のシェアを占める米国医療機器産業は、1,480億ドルという世界一の市場規模を誇り、2017年には1,550億ドルに達すると見込まれている。しかし、医療機器の欠陥は、消費者の身体に多大なる被害をもたらす可能性があるため、州法上の製造物責任及び人身傷害責任(以下「製造物責任等」)のリスクが高いのは否めない。そこで、第2回リーガル塾では、米国における医療機器OEM及び素材・部品サプライヤー(サプライヤー)の製造物責任等をめぐる法的防御に焦点を当てたい。

<米国の医療機器関連の規制>

連邦食品・医薬品・化粧品法(FDCA)及び1976年医療機器修正法(MDA)によると、疾病の診断/治療/予防を目的とする、あるいは身体構造/機能に影響を与えることを目的としたあらゆる機器/付属品/部品を「Medical Device(医療機器)」と定義しており、身体に与え得る危害の度合に応じてクラスI(低リスク‐例:老眼鏡)、クラスⅡ(中リスク‐例:注射針)、クラスⅢ(高リスク‐例:ペースメーカー)の3つに区分され、連邦食品医薬品局(FDA)がその流通、販売等を監督している。クラスI、II及びクラスIIIの既存の医療機器は、510(k)と呼ばれる登録が義務付けられているが、クラスⅢの新型医療機器を販売する場合は、より厳格な手続きとして、その安全性と性能を科学的に証明した後に、Premarket Approval(以下「PMA」)と呼ばれるFDAの事前認可を得なければならない。PMA認可には実に数年かかる場合もあり、認可後も一定の義務が課される。 

<MDAによる保護>

Medtronic社のPMA取得済みカテーテルを使用した冠動脈バイパス移植術を受けたCharles Riegel氏は、術後同社のカテーテルが破裂したことを理由に同社を相手取り提訴した事件で、2008年米最高裁は、FDAが課す義務や要件以外を根拠に消費者は、州法上の製造物責任等を追及することはできない旨判示しており、同判決は現在でも有効である(Riegel vs Medtronic, Inc., 2008)。つまり、OEMやサプライヤーは、MDA下におけるFDAのすべての規程を遵守している限り、州法上の製造物責任等の訴訟から保護されることになる。

<1998年生体素材アクセス保証法による保護>

更に、インプラント型医療機器のサプライヤーは、1998年生体素材アクセス保証法(BAAA)によっても保護され、原則として州法上の製造物責任等を負わないが、今後の判例でその適用がより明確になるであろう。ただし、例外的に、①製造業者、OEM又は転売業者とみなされる場合、②仕様基準を満たさない場合、③故意の不法行為の場合、④ブレスト・インプラントの素材/部品の場合には、BAAAは適用されない。

<州法上の「コンポーネント・パーツ・ドクトリン」による保護>

仮に上記によって保護されない場合であっても、医療機器のサプライヤーについては、第1回リーガル塾でも述べたように、多くの州で「コンポーネント・パーツ・ドクトリン」による保護が与えられ、①素材・部品そのものの欠陥による場合、又は②サプライヤーが完成品統合の設計等に大きく関与した製品の欠陥による場合以外は、製造物責任等を負わない。

<考察>

 製造物責任等訴訟で最終的に勝訴したとしても、判決までに多額の訴訟費用や弁護士費用を要する。しかし、情報公開前に棄却されれば上記費用は低く抑えられるため、情報公開前の初期段階でいかに防御して棄却に持ち込むかが大切である。従って、OEM及びサプライヤーは、前述した法の保護要件や例外事由を正確に理解することが肝要である。

 

「リーガル塾:3分で学ぶ米国ビジネス法」™は、法律や判例を通して米国社会とビジネス法の理解を深めることを目的としている。ここで扱う内容は、一般的事実であり、特定の状況に対する法的アドバイスではなくそれを意図したものでもない。個々の状況に対する法的アドバイスについては、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。

企業概況ニュース・U.S. JAPAN PUBLICATION N.Y. INC.・https://ujpdb.com/

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