News & Events

米国における契約の重要性 ~(1)契約社会の米国~

日本の商慣習は、長年の付き合いから生まれた信頼関係に基づいているため、契約上で明記されていない問題が発生した場合や契約条項に疑義が生じた場合は、双方が「誠意を持って協議して解決するものとする」という、いわゆる「誠実協議条項」を含んでいることが多い。つまり、日本の契約は契約条件に幅を持たせる大雑把な取決めと言えるかも知れない。一方、契約社会と言われる米国の契約は、将来のあらゆる可能性やリスクを想定し、それぞれに対して明確な規定を定めるのが通常である。それは、問題が発生してからでは冷静に協議し問題解決を望めない状況に至ることが多いため、事前に可能な限り詳細の規定まで定めるという姿勢が基本となっている。

この基本的な認識の違いのため、日本企業が契約の細かい条項をあまり吟味せずに、相手当事者である米国の会社の「誠意」を信頼して契約を締結したため、後に痛い目にあったと言うケースは少なくない。そういった状況を避けるために、これから5回に亘り、米国の契約法について基本的な留意点を考察したいと思う。

<交渉の進め方>

米国では当事者同士が、お互いの要求をぶつけあい、細かい点までも交渉し、一字一句を確認しながら契約書を完成させていく。交渉の進め方は、会社同士の交渉であっても実際には担当者同士の人と人の交渉であり、通常、以下の二つのタイプに分かれる。

  • 攻撃的タイプ(強い要求/妥協しない/容易に譲らない(タフ)/高圧的態度)
  • 協調的タイプ(相互理解/共通点を見出そうとする/あいまい/協調的態度)

攻撃的タイプを相手にすると、やり難いと思うかもしれないが、攻撃的タイプは「ダメもと」でとてつもない要求を出してくることがある。従って、相手の高圧的要求に屈せずに忍耐強く不公平な点を丁寧に説明していくことにより、相手を少しづつ切り崩すことも可能である。特に攻撃的相手が論理的である場合、論理的かつ段階的に説明する事により相手の理解を得ることが出来るかもしれない。逆に自分が攻撃的タイプである場合、タフな交渉人として交渉を有利に運ぶことも可能かも知れないが、その反面、関係が不必要に緊張的になり、相手の信頼を最初から損なう可能性も十分ある。また、一歩も妥協を許さない強固な態度を固辞し続けると結局「フェアではない」と相手に見限られる場合もある。更に相手も攻撃的タイプである場合、合意に至るのは至難である。

協調的タイプは、攻撃的タイプに比べ交渉もやり易い反面、あいまいなため相手の真意を探るのが難しい。しかし、こちらから明確な要求を論理的に説明することにより有利に交渉を行うことも可能である。自分が協調的タイプの場合は、攻撃的な相手が交渉をリードする可能性があるが、お互いのニーズがうまくかみ合っている場合は、予想以上に交渉がスムーズに運び、双方が勝ちを得るような結果を生むこともある。

従って、効果的な交渉を行うためには攻撃的/協調的といった一定の型にはまるのではなく、それぞれの特徴を生かし必要に応じて攻撃的、または協調的になり、巧みに交渉を運ぶ事が大切である。一般的に効果的な交渉人は、論理的、協調的で信頼感がある反面、容易に譲らない(タフ)タイプが多い。

更に、効果的に交渉を行うためには、次のような点に留意すべきである。

  • 譲れる点と譲れない点の優劣を事前につける。
  • 現実的かつ明確な要求を段階的に準備する。
  • 協調的態度を維持しながらも、自分の立場を堅持する。
  • 意見のずれがある場合は、自分の立場を論理的に説明する。
  • 時間的制限や当事者同士の力関係を考慮し段階的妥協点を事前に用意しておく。

<考察>

なお、交渉の内容が自分の専門ではない場合や法的リスクが伴う場合は、専門分野の弁護士を代理交渉人として利用することも一つの策である。

参考文献:“Getting to YES” by Roger Fisher and William Ury

本記事の内容は、一般的事実を述べているだけであり、特定の状況に対する法的アドバイスではなく、それを意図したものでもない。個々の状況に対しての法的アドバイスは、直接当事務所にご連絡頂くか、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。

企業概況ニュース・U.S. JAPAN PUBLICATION N.Y. INC.・https://ujpdb.com/
J weekly https://jweeklyusa.com/

Go Back