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米国における契約の重要性~(4)契約書の基本的構成~

米国の契約書は、各当事者間の意向を反映しつつ、すべての起こりえる可能性についてリスクを下げるための解決方法を詳細に亘り明確に定義していく。通常の商取引上の契約書は、大きく分けて二つの種類の内容を含んでいる。まず、各当事者の履行内容や支払い条件など一般的にビジネス条件と言われる条項である。次に、将来の法的手続きに大きく影響してくる可能性のある法的内容を含む条項である。今回は、通常の契約書に良く見られる法的条項のいくつかについて説明してみよう。

<Exclusive Rights(独占権)>

一定の地域における独占的な営業権などを付与する規定である。独占権を付与する側は、事前にどの程度のリスクが存在するか十分に吟味し、独占権の地理的又は期間的限定を行うか、又は、非独占権を付与すべきか検討する必要がある。

<Representation and Warranty(表明と保証)>

各当事者が提供するサービスや商品などについて一定の表明を行いその内容を保証するものである。例えば品質やサービスの基準を細かく規定し、破損や瑕疵の対処方法も定める。保証内容を細かく規定することにより、逆にその規定を満たしてさえいれば当該当事者は責任を負わないと主張する可能性もあるため、表現内容や適用期間について、綿密に吟味を行う必要がある。

<Indemnification(補償)>

補償とは、自らの契約不履行や契約違反、第三者による訴訟などにより、相手当事者が損害や被害を被った場合に、相手当事者を補い償うという契約上の義務であり、前述の表明と保証内容に密接に関係してくる。契約内容によっては、片方の当事者のみが補償義務を負う場合や両当事者がそれぞれの不履行に対し責任を負う双方向の形態とがある。片方の当事者の補償義務が大きければ大きいほど、相手当事者の法的リスクを下げることができるため、当事者間の交渉が難航する条項の一つである。最終的には当事者の力関係が影響することが多い。

<Limitation of Liability(法的責任の制限)>

片方の当事者が、補償義務などの法的責任を負う場合、その法的責任の種類や限度を制限する場合がある。法的責任を制限すればするほど、補償義務を負う当事者にとっては有利なものの、補償を受ける側にとっては不利になってくるため、交渉において双方の意向が闘われる条項である。折衷案として、1年間に想定される取引総額や保険会社による支払い額を法的責任の上限とする場合もある。

<Term and Termination(契約期間と解約)>

契約がいつ発効しいつまで有効であるかを規定し、解約を行う場合の条件や手続きについて明記する。いずれかの当事者が不履行や契約違反を行ったり、その当事者が倒産した場合などにおいて、他方の当事者の選択肢を明記するものだが、特に不履行等がなくても一定の条件を満たせば解約できるとする場合もある。

<Applicable Law and Jurisdiction(準拠法と裁判管轄)>

万が一当事者間で争いが起きた場合、どの法律に従い、どこの裁判所で提訴すべきかを規定する。国際取引などになると特に問題となる条項である。従って、訴訟を起こす側は、相手当事者の国(州)の法律を準拠法とし、当該地の裁判所で提訴をしなければならないと定義することにより訴訟リスクを下げる場合もある。しかし最終的には力関係によって決まってくる場合が多い。

<考察>

契約書は、その目的、当事者、事業分野、法的リスクなどによって含まれる条項が変わってくるので、これらの基本的な条項を網羅していれば安心してよいというものではない。特に法的リスクの高い事業分野や契約対価の金額が大きい場合は、専門の弁護士に相談することをお勧めする。

本記事の内容は、一般的事実を述べているだけであり、特定の状況に対する法的アドバイスではなく、それを意図したものでもない。個々の状況に対しての法的アドバイスは、直接当事務所にご連絡頂くか、専門の弁護士にご相談されることをお勧めする。

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