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加州サプライチェーン透明法 ~情報開示の義務~

最近、米国では、バングラディシュ及び中国ウィグル自治区における強制労働に関する報道などにより、サプライチェーン上の搾取に対する企業や消費者の意識が高まっている。今回は、2010年に成立し、2012年1月1日から施行されているカリフォルニア州サプライチェーン透明法(The California Transparency in Supply Chains Act of 2010、以下「CTSCA」)について考えてみたい。

CTSCAの背景と適用対象

CTSCAは、カリフォルニア州の小売業者及び製造業者に対し、自社のサプライチェーンにおける人身売買及び奴隷労働に関して行う独自の調査について情報開示することを義務付けている。消費者自身がそのような違反行為に加担しているかどうかを判断するのは非常に難しいので、企業が奴隷制度や人身売買をなくすためにどのような対応をしているかという情報を消費者に開示し、消費者がその情報を基に責任ある購買決定を行うことができるようCTSCAが制定された。

CTSCAは次の企業に適用される。

  1. 税務申告書上で自らを小売業者又は製造業者と名乗っている。
  2. 全世界における年間総収入が一億ドルを超えている。
  3. カリフォルニア州で事業を行っている。(カリフォルニア州で設立されたか、同州に住所を有している。)
    • カリフォルニア州における年間売上高が、その企業の総売上高の25%又は該当する基準金額を超えている。
    • カリフォルニア州における固定資産の額が、その企業の固定資産総額の25%又は該当する基準金額を超えている。
    • カリフォルニア州における従業員への給与額が、その企業の給与総額の25%又は該当する基準金額を超えている。

企業に対する要請事項

同法は、適用対象となる企業に対し、検証、監査、認証、社内の説明責任、研修という項目において企業の情報開示を義務付けている。

検証 どのようにしてサプライチェーン内の人身売買及び奴隷労働に関するリスク検証を行っているかを開示しなくてはならない。要請事項を満たすには、その検証が独立した第三者機関によって実施されているか否かも言明する必要がある。

監査 人身売買及び奴隷労働に関する社内基準のコンプライアンスを評価する監査がどのように行われているか開示しなければならならない。監査が抜き打ちで行われる場合は、その詳細を開示する。

認証 企業がサプライヤーを調査して、国又は地域の人身売買及び奴隷労働法に準拠していることを証明しなければならない。

社内の説明責任 企業は、その従業員又はサプライヤーが人身売買及び奴隷労働に関する基準を順守しているかを判断するために設定している社内手順を開示しなければならない。

研修 企業は、従業員への研修でどのように人身売買及び奴隷労働のリスクを低減するように訓練しているかを開示しなければならない。

ホームページ上での情報開示の義務付け

これらの義務に加えて、企業のウェブサイトでは、CTSCAに基づく情報開示のページへ誘導する「わかりやすいリンク」をホームページ上に掲載しなければならない。ウェブサイトがない企業の場合は、情報開示を求める消費者に対して、要求受領後30日以内に書面で開示情報を提供しなければならない。

考察

CTSCAの執行管轄権はカリフォルニア州務長官にあり、規定上は違反しても罰金は科されないが、差し止め命令を通して情報開示を義務付けられることになる。企業は、CTSCAの適用対象になるかを判断し、該当する場合は、期日内に情報開示を行う必要がある。また、CTSCAの適用対象ではなくても、企業の評判を高めるための戦略として、自主的に情報を開示している企業もある。

ここで扱う内容は、一般的事実であり、特定の状況に対する法的アドバイスではなくそれを意図したものでもない。

Yorozu Law Groupは、サンフランシスコに拠点を置く国際法律事務所で、企業法務、国際税務、M&A/戦略的提携、ライセンシング、国際商取引、雇用法において日本語と英語で法務サービスを提供している。© Yorozu Law Group

略歴

萬(よろず)タシャ

Yorozu Law Group 代表弁護士

オレゴン州生まれの関西育ち。カリフォルニア州・オレゴン州弁護士、MBA取得。米国で20年以上の弁護士経験を有し、日系企業の外部顧問を多数務める。現在、北加日本商工会議所会頭、米日カウンシル常任理事兼書記役、ジェトロ SF 中小企業海外展開現地支援プラットフォームの法務コーディネーターを務めている。日英に堪能。

企業概況ニュース・U.S. JAPAN PUBLICATION N.Y. INC.・https://ujpdb.com/

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